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Re:again
第8章 【紫陽花色の雨】
*****

目覚めた時は布団の中にいた。
いつもの部屋着を着ていた。
気分は最悪だった。
地獄の淵で目覚めた気分。
頭の中がドブのように濁っていた。
重く淀み痛む―
昨夜の出来事が現実に起きたことなのか夢であるのか判断がつかない。
身体中がアザだらけだったから何かが起きたことは間違いない。
怠い身体をやっと起こし、胃薬を飲む。
そのまま昼過ぎの出勤までぐずぐず布団の中で過ごした。
顔が浮腫んでいた。
葵のことは考えなかった。

*****

「‥斎藤さん、斎藤さん大丈夫?
瞬き忘れているけど」

二日酔いと夢見が散々だったせいでちっともやる気が起きない。
給料泥棒と言わればそれまでだけど、こんな気分な日もある。
レジの中に籠り、お姉様とも口をきかずに一点を見つめたままカシャカシャ袋をシュッとさせた。
レジ袋の補充もしたいところだけど、屈みたくない。
今屈むとなんか色々出てきちゃいそう。
内蔵から弱音だとか愚痴だとか。
気分は幾分か楽になったが、葵のことが気になっていた。
考えまいとするのに、無意識の内に昨夜の夢うつつな出来事が胸を去来する。

「斎藤さん、大丈夫?
今日はもう帰る?
週の中日で暇だし、早退してもいいよ」

意識を取り戻したら店長の顔が目の前にあった。
呆けていたら余計に体調不良を疑われた様子。
今日は20時上がり。
今は14時。出勤してから1時間しか経っていない。
暇だとは言え、夕方には小さなピークもある。
明らかに気を使わせている‥。
普段なら“大丈夫っす” と乗り切る。
感染病でもなければ、よほどのことがなければ這ってでも残る。
私には愛社精神なんてもの、社会人としての自覚なんてものはない。
ただ単に生活費を己自身の力で稼がねばならないだけ。
私の名前はそう、守銭奴。
でもね、涙が出ちゃう。女の子だもん。

『‥お言葉に甘えていいですか』

店長の眼が驚きでくわっと見開かれた。
何だよ。自分で言っておきながら、帰るっつったら化物を見るような目で見るのは何でだよ。
どんだけ普段から私のことを守銭奴だと思ってんだよ。

「‥明日はあられが降る」

心の声がだだ漏れだよ、店長。
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