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第8章 【紫陽花色の雨】
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引越してやる!
引越してやる!

あれから商店街を全力疾走で駆け抜け、あげたてのコロッケと焼き鳥と牛すじ煮込みを買って、駅前の駐輪場で猛烈に食べた。
飲み物がなく咀嚼しづらかったが、構わず胃袋に収めた。
何かを口にしていないと内蔵にパンパンに詰まった黒い感情がエクトプラズムのように放出されてしまいそうだった。
我に返った時、こどもを連れた自分と同世代の母親が怯えた様子で私を見つめていた。

『‥こんにちは』

まぬけだ。
あ、そういえば私、体調不良で早退したんだったなと情けなく思う。
あんなにスタコラ走って何だか馬鹿丸出し。

私の挨拶は無視され、母親はこどもを自転車の前に乗せて颯爽と去っていく。
羨ましかった。
あのひとはひとりぼっちじゃなくて羨ましい。
血を分けたこどもがいて、帰る家があって羨ましい。
その家に家族が待っているなら尚羨ましい。

マイコが言うように、どうやら私は寂しいみたいだ。
葵が私から離れてゆくのが途方もなく寂しい。

とぼとぼと帰路を目指す。
誰も知らない、葵のいない場所に引っ越そう。
近所に葵の彼女が住んでいるなんて耐えられない。
それがどうしてかは説明出来ないけど、私はどうしても耐えられない。
お似合いのふたりの姿なんか絶対見たくない。

不動産屋さんでアパート情報のチラシを手当たり次第に貰う。
誰も知らないところに行こう。
葵がいないところに行こう。
チラシを握り締めながら嗚咽を漏らして泣いた。

公園のトイレで暴食したものを戻した。
泣きながらブランコを漕いでいたら、それまで楽しそうにサッカーで遊んでいた男の子たちまで怯えて帰ってしまった。
皆帰る家があって羨ましい。
皆私をひとりぼっちにする。

身も世もないほど声を上げて泣いた。

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