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第8章 【紫陽花色の雨】
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こどものように遊んで汗もかき、小汚ない私たち。
気楽なファミレスで夕食。料理のチョイスは爽介任せ。
爽介は野菜を中心に、少しずつの量・たくさんの品数を頼んだ。
バランスが良かった。
何も言わなくても私が好きなものがこっそり入っている。
幼なじみって便利だねぇ。

「時間掛かっても良いから出来るだけ食え。お前が食いたくない気分でも、身体は栄養を欲してんだよ。
今日はたんまり遊んだんだから腹に入るはず」

言われた通り取り分けられたものを黙々と食べる。

「酒は今日は止めとけよ。暫く抜け。
‥お前、死ぬぞ」

葵の幸せを心から願えるなら、死んでもいいと思った。
だけどそんなことを言ったら、心配してくれる爽介の気持ちを踏みにじってしまう。
口を開けば泣いてしまいそうだから、黙って頷いた。
自然と涙が溢れてきた。
泣きながら頷いた。
静かに料理を咀嚼する。
爽介は何も言わずに、微笑みながら私の涙を拭ってくれる。

*****

「孝介と真央を呼んだけど結局、都合つかなかったな」

ファミレスを出て駐車場に向かう。

『本当?会いたかった。特に真央ちゃん。
おっきくなった真央ちゃんなんて想像出来ない』

「んー。アイツはなー…」

なぜか明後日の方向を見ている爽介。

「今度会わせてやる。‥見ても驚くなよ?」

『益々爽介にそっくりだって孝ちゃんが言ってた』

「俺に似てイケメンなんだから感謝されたいもんだな」

ドヤ顔の爽介。

その時―
横断歩道の向かい側で背の高い男性と髪の長い女性が激しく言い争っている姿が目に飛び込んできた。

「おい、あれって――」

どこにいたって目立つ長身と黄金色の髪の毛。端正な顔―葵だった。
女性はこちらに背を向けているため、顔は分からない。すらりとした細身の体躯。スタイルが良かった。
爽介が葵に声を掛けようとする。

『止めて!―行こう、爽介』

早打ち鐘―心臓がけたたましく鼓動を刻んでいる。
嫌な汗が噴き出し、指先だけが冷たい―

葵と彼女の姿なんか見たくない。
爽介の腕を引っ張って駐車場へ急いだ。

*****
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