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第8章 【紫陽花色の雨】
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『‥葵…来てたの』

真っ暗な玄関の床で葵が膝を抱えて待ち構えていた。
葵の身体をかわす。

『悪いけど今日は帰って』

「‥この前は‥ごめんなさい…」

『何のこと?覚えてない。帰って』

完全な八つ当たりだった。
揉め事があったにせよ、葵は謝ってくれている。そもそも私が葵を怒らせたのだ。
本来ならば私が葵に謝るのが筋だった。
―すべて私の心が苛立っているせいだ。
葵に“特別なひと”が存在すること。
爽介に自ら望んで抱かれたこと。
葵が離れていくこと‥。
何もかもが気に入らなかった。

部屋に入ることは出来なかった。
葵が道を塞ぐように私の前に立ちはだかった。

「‥3日間も…どこにいたの…」

無視して部屋に入ろうとする。
葵が旅行かばんを掴む。

「‥3日間も…何してたの…」

葵の腕を振り払った。
旅行かばんは廊下に放り、部屋の明かりを点けるためにスイッチに手を伸ばす。葵がそれを阻む。

「‥答えて。3日間もどこで何をしてたの…携帯の電源まで落として…」

葵の身体を突き飛ばした。
葵はよろけ、壁にぶつかった気配がした。
明かりは諦め、暗闇の中で押し入れから布団を投げる。

『心配してくれたんだ?でも、余計なお世話。私、疲れてるから。もう寝たいから帰って!』

「‥こんなに部屋を散らかして‥急に消えちゃって‥心配しないワケないでしょ……みちるちゃん、引っ越すの?……」

荷造りの際、部屋中を掻き回した。
テーブルの上にはアパート情報のチラシ。
確かに部屋を荒らしたまま出掛けていた。

『葵には関係ない!
私のことは放っておいて!話すことなんてない』

じたんだを踏んだ。
布団を乱暴に敷き、部屋着を取り出した。
葵が立ち去る気配が無いので着替えのために浴室に入る。
葵がまた道を塞いだ。

「‥どうして関係ないなんて言うの?‥どこで何をしてたんだよ。なんで引っ越しちゃうんだよ。
どこに行くって言うんだよ…」

葵の声に苛立ちが混ざる。

『‥私がさっきまで何をしてたのか教えてあげようか?』

自虐的な気持ちになった。
葵が少しでもうちのめされればいいと思った。
立ち尽くした葵が私の顔を見つめた。
窓ガラスから洩れた外灯の光が葵の肌を青白く照らす。
髭が生え、眼が殺伐としていた。
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