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Re:again
第8章 【紫陽花色の雨】
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過去に侵した自分の過ちを悔いる時、贖罪の代わりに葵の幸せを祈って生きてきた。

いつか私は赦される時が来るかも知れないと爽介は言ったが、悔いることすら赦されない罪もこの世には存在する。

【赦しを乞うことすらもおこがましい過ち】

それを知りながら、心の中で《彼》に赦しを乞いそうになった時、代わりに葵のことを考えてこれまでやってきた。
葵という存在がいなければ私はもっと早くに駄目になっていたかも知れない。
5年という月日をやり過ごすことは出来なかったかも知れない。

葵は私に遣わされた【贖罪の天使】だ。

良心の呵責に耐え兼ね、心が押し潰されそうな夜はあの子の笑顔を胸に描いた。
心の奥で何度も何度も葵の幸せを祈った。

“葵がずっと笑顔でいられますように。
あの清らかな笑顔が壊れることがありませんように。”

そうすると死に掛かった心に蝋燭の炎が灯り、生きる希望を見い出せた。
あの微笑みに私がどんなに救われていたか。

葵の言う通り、私は自分の身勝手でこの5年間あの子を縛りつけていた。
あの子の優しさに漬け込み、“共依存”という方法をもって。

葵の幸せを祝福するという道もあったはずなのに、私はその道を選ばなかった。
どうせ手放すならば滅茶苦茶に壊してやりたいと、私という記憶を鮮烈に刻みつけてやりたいと、敢えて葵を傷つけた。

‥同じ過ちをまた繰り返している。
少しは成長したかと思っていたのに、私はどこまでも身勝手で残忍だ。

―本当に哀しい時には涙なんて出ないものだ。
葵のことばかり考えているのに、私の瞳からは一滴の雫も落ちてきはしない。
そうか。私はひとりではうまく泣けないから、葵のそばで泣いていたのか。
私はもう、葵の幸せを祈る資格もない。
赦しの免罪符を無くした今、残ったのは空っぽの“日常”だけだ。

私は自ら蝋燭の炎を吹き消した。
―私が踏みつけ、粉々に壊してしまったものは葵の心と自分自身の心だった。

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