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Re:again
第8章 【紫陽花色の雨】
*****

20時でレジを清算し、翌日の棚卸しに備えて残業した。
作業の途中だったけれども22時を回ったところで先に上がらせてもらう。

駐車場の一ヶ所だけチェーンが外された入り口付近で、爽介がポールにもたれて紫煙を燻らせていた。
Tシャツにスウェットを着て、どことなくぼんやりしている。
髪の毛もセットしていないし、寝癖のようなものがついていた。
こんなに気の抜けた爽介の姿を目にするのは初めてだった。

『爽介‥ずっと待っててくれたの?』

今日シフトに入っていることは伝えたが、勤務時間までは伝えていない。
いったい何時から待ってくれていたのだろう。
爽介は煙草を携帯灰皿に揉み消し、黙って私を抱き寄せた。
私の視線を避ける。

『爽介?』

爽介が私の首筋に頬を寄せる。
爽介の頭を撫でる。
染色を繰り返してきたはずの髪の毛はパサついていた。

「……また何もなかったことにされるとショックだから。
それが一番堪える」

『‥うん。上がりの時間、教えておけば良かったね。ずっとここで待ってくれてたの?』

爽介は何も答えない。
―私は爽介の心も蝕んでいるのかも知れない。

*****

アパートには駐車場が無い。
店長に一言断り、スーパーの駐車場に爽介の車を置かせてもらった。
店内に戻る時、爽介も私の服を握ったまま後ろからついて来た。
干物女の私が“男連れだ!”と、残業をしていた社員さんまで巻き込んでの大騒動になった。
爽介が色男だということに更に騒動の波紋は大きくなった。

「年下をたぶらかしちゃって」

なんてニヤニヤ顔でつつかれる。
いや‥爽介は生まれ月こそ遅いですけど同い年ですよ??

横をちらりと見やれば寝癖隠しにキャップを目深に被った爽介。
う~ん。確かに、少年に見えるかも。
何か口を出すかなと思ったけど、爽介は黙って頭を下げただけだった。
人前でも手を繋いでこようとするので、さりげなくたしなめる。
爽介はそっぽを向いた。
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