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Re:again
第8章 【紫陽花色の雨】
*****

それから数日、お互いの部屋のいずれかで時間を共に過ごした。
私の仕事、爽介の不定期なインストラクターの仕事以外はずっといっしょにいた。
宣言通り、爽介は毎晩私を抱いた。

爽介は私に“好き”だとか“愛している”という言葉を使わない。
キスマークも残さなかった。

ドレッサーの奥にしまい込んだままのネックレスのことについても触れない。
ネックレスは身につけられない癖に、私は葵から贈られた香水を身に纏った。
葵から贈られたものだとは爽介には明かさなかったが、香りに気付いた時、爽介は必ず私を激しく抱いた。
行為に耽りながら爽介は、自分の名前ではなく葵の名前を私に呼ばせた。

『――葵、葵』

爽介に腰を打ち付けられながら、葵の名前を呼んだ。
それがどんなに倒錯的で破廉恥な行為であるかは充分に理解していた。
私が葵の名前を口にする時、爽介は表情を歪める。
爽介と繋がりながら葵の名前を叫び続け、意識を手離す―

これは踏み絵なのかも知れない。
葵への未練と執着がないか、爽介は私を試している。

*****

私が爽介に抱く気持ちは恋愛感情とは別物かも知れない。
爽介を見ると凪いだ海のような穏やかな気持ちになる。

過去に私が爽介に抱いた激しい感情‥その感情は私のどこかには眠っているはずなのだけれど、それがどこにあるのか、その感情を揺り起こしたいのか今はわからなかった。

ふいにこれから爽介を愛せるだろうか、と思った。
たぶん愛せる。
ただし、かつての恋心とは全く違う別の愛し方で。

【恋はするものではなく堕ちるもの】

とはよく言ったものだ。
あんなに手に入れたかった存在がすぐ近くにいるのに、私の心には風穴がぽっかりと口を広げている。
爽介の気持ちに応えたいのに、自分でもどうすることも出来ない。
爽介のに堕ちてしまいたい―
そう思うのに、私は自分の風穴に吸い込まれてしまう。
そして闇の深さに愕然としてしまうのだ。

葵のことは不思議と考えなかった。
頭の中にもやが掛かったような気分になり、考えがうまくまとまらなかった。
そして夜には爽介に抱かれながら葵の名前を呼ぶ。

『私‥地獄に堕ちる』

爽介と交わった後、唐突に口を開いた。
爽介は驚かず、真意も問わずに静かに言った―

「―お前が地獄に堕ちるなら、俺もいっしょに堕ちてやる」

*****
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