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第8章 【紫陽花色の雨】
「穴は3つあるから大丈夫だろ?空いてるトコに突っ込めよ」

「玩具を使うのはアリなの?」

「アリだ。俺にも貸せよ」

『爽介!孝ちゃん!』

ふたりとも笑ってるよ‥。
何なんだ。この兄弟は。
なんでこんな風に育っちゃったの?
DNAの成せるワザ??

それから気ままに呑んだり食べたり。
運転があるので爽介はウーロン茶だけど、今日は爽介の許可も出たことで私も孝介と共にお酒を楽しむ。

「でもよくココに来ること爽ちゃん許可したね。みーちゃんのこと独り占めしそうなのに」

「…可愛い弟が俺は不憫でしょうがないんだ。お前は本当に可哀想なヤツだよ‥」

「ねぇ、みーちゃん。
最近、妙にお兄ちゃんが優しいんだけど心当たりある?
ことあるごとに憐れまれるんだけど」

『さ‥さぁ?』

「そのうすのろに聞いても無駄だぞ。コイツは脳味噌がミジンコサイズだから物覚えが悪い。
男心という字も覚えられない。俺が毎日書きとりさせているところだ」

スマホが鳴り、爽介が立ち上がる。
そのまま部屋を後にした。

*****

「みーちゃん、あーん」

孝介に生春巻きを食べさせられる。エビがプリプリ。

「僕にも食べさして」

スイートチリソースをつけて孝介の口元に運ぶ。
嬉しそうにもぐもぐする孝介。
爽介は冷酒。私は柚子酎ハイ。ん?なんかこの酎ハイ、アルコールが強い‥?
若干酔っ払ってきたかも知れない‥。

「みーちゃん、あーん」

また生春巻き?
振り返ったら孝介の顔が間近にあった。
いつの間に接近したんだ?!
唇を奪われ、濃厚に舌を絡みとられる。
注ぎ込まれた冷酒の味に頭がくらくらする。

「―ムカつく。攻略を練っていたらまたお兄ちゃんに先越されちゃった」

忌々しそうな顔で孝介がネクタイを緩める。
ジャケットを脱ぎ、腕捲りをする。
思わず腰が引ける私。

「‥爽ちゃんもイイ趣味してるよ。
さっきわざと声聴かせたでしょ?
‥可哀想って何だよ。いっつもひとのこと馬鹿にしてさぁ‥余裕綽々でムカつく!
―僕だってみーちゃんを味見したい」

舌舐めずりをする孝介。
赤い舌がいやらしい。
気がつけば孝介の眼が据わっている‥。
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