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Re:again
第2章 【リップサービス】
*****

「―興奮したんでしょ」

ハァ、と爽介の熱い息が私の髪を揺らした。
手洗い場の縁に座らされ、爽介の腕が絡みついてくる。

「自分も同じようにされたかった‥?」

耳朶を舐め上げられ
ヒャッと裏返った声が出た。
爽介がまた嘲笑った。

「――妬いた?」

爽介の舌が怪しく蠢く。扇情的だ。
妬く?私が?どうして?
あなたは私のことを覚えていないのに?

―私たちは確かに幼なじみだったし、私はずっと爽介が好きだった。
でも、色っぽい出来事など起きなかった。


爽介は幼児の頃からモテモテで、凄まじい勢いで“スケコマシ街道”を爆走した。
爽介は女に不自由したことがない。
常に追い掛けられる側だった。
爽介の隣には必ず学年一の(時には上級生の)可愛子ちゃんがいた。

その癖、爽介は色事に疎いところがあった。
常に女の子との噂がつきまとっていたが、実態はせいぜい手を繋いだり、キスをしたり…そんなものだったのではないかと思う。
少なくとも中学生まで、私が知る限りは。

―爽介は私を選ばなかった。
一度の間違いすらも起きなかった。

『‥やめ…てッ』

耳朶からうなじ、首筋へと爽介の舌が這いまわった。
頭がクラクラする。ムスクの香りの中に爽介の体臭が混じっていた。
こどもの頃から爽介はイイ香りがした。
その香りに似ているような、似ていないような汗の匂いに混乱を覚える。
爽介の瞳からは何も感じとれない。
たまに視線が絡むのだが、私がすぐに反らしてしまう。

―どうしてこんなことをするのだろう。
私が何をしたというのだろう。
爽介は私のことをすっかり忘れてしまっている。
合コンに紛れこんだ見知らぬさえない女をからかっているのか。
爽介はこうやって、気まぐれに数多の女を蹂躙するのか。
―こんな爽介を‥私は知らない。
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