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第8章 【紫陽花色の雨】
「……あぁ。‥ねぇ、ソウスケにどうやって抱かれたの…」

葵の表情はどこか夢見心地だ。

『‥葵の名前を呼びながら抱かれた‥』

葵の眼が驚きで大きくなる。私の姿をしっかりと捉え、気まずそうに視線が宙を漂った。

「‥なぁにソレ…オレ、怒ればいいの?
喜べばいいの?」

*****

「‥んぁー…ダメだぁ…みちるちゃんがそんなこと言うから頭がグラグラする‥欲望に負けそう‥バックで滅茶苦茶にハメてやろうかな…」

『そんなことしたら綺麗な身体でいられなくなっちゃうよ?』

「ん、ん‥わかってるけど‥こんな風になっちゃったんだもん…」

腕を掴まれ、葵の膨れ上がった股間を触らされる。
お互いに顔を赤らめる。
唇を交わし熱く視線が絡み合ったその時―

ドカドカドカッ………!!!

『なっ‥何事?!!』

隣室から壁が蹴られる音。すぐにインタホーンの連打。怒鳴り声。
ドアノブがガチャガチャ回される音。
ドアが激しくノックされる音が響く―

葵がぷふッと吹き出した。

「‥みちるちゃん、角部屋だしずっと隣空いてたから知らないと思うけど‥このアパートの壁、超薄いよ…」

綺麗な微笑みを浮かべる葵。
天使みたいだ。

「‥ソウスケとのセックスのカワイイ声、筒抜けだった。
だからオ・カ・エ・シ」

―前言撤回。
悪魔は天使に似ている顔を持つという言葉を思い出す。

*****

鳴り止まないインタホーン攻撃を無視し、葵とふたりでくっついた状態で寝転がる。

『店長が見た葵の彼女って真央ちゃんのことかなぁ?』

「‥たぶん。引越してきた時、銀行や郵便局の場所教えたから。
スーパーは寄らなかったけど、どこかで見られんだと思う…」

『彼女の家が近いって何だったんだろう‥』

葵の顔が赤くなる。

「‥それ‥みちるちゃんのコトだと思う。
何か誤解させたのかも……みちるちゃん、引越ししないよね‥?…」

『うん。しない!』

「‥安心した。ねぇ‥どうしてソウスケはオレのコト“肥やし”って呼ぶの‥?
肥やしってなぁに?…」

『あぁ‥それはね…爽介に葵との関係を訊かれた時、咄嗟に口から出たの。葵は私を暖めてくれる《腐葉土》だって』
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