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第9章 【ウィークエンドはあなたと】
キッチンでお肉を開き、下味をつけながら真央と会話する。
真央は作業台の丸椅子に座って見えない葵の影に怯えている。

「‥ミーコはこの前の軟禁生活を知らねぇからな…相当追い詰められたよ。ミーコに会う前に引っ越すか、葵に抱かれるかの二択だからな。
引っ越すにしても金ねーし。葵が怖過ぎてもう少しで逆に好きになりそうだった。つり橋効果で。
精一杯、この歳まで女からも男からも操を守ってきたのによりにもよってダチに犯されそうになるとは‥思わぬところに伏兵がいたもんだぜ。ミーコに会っても恋に堕ちないようにって俺をオンナにしようとしたんだからな。狂気だよ‥」

震えながら自分の身体をそっと抱き締める真央。

『災難だったね‥とりあえずコレでも食べて待ってなよ。飲み物は冷蔵庫から好きなの取って』

きゅうりの浅漬けとアボカドとエビのサラダの小鉢を真央に出す。
小躍りしつつ冷蔵庫からビールを出す真央。

『あ!ダメだよ!お酒は二十歳になってから!』

「ケチ~」

ブスくれながら葵専用1.5Lオレンジジュースのペットボトルを取り出す真央。

「‥名は体を表すって本当だ。皮肉だよな。本当は三番目は女が良かったから“真央”。兄貴たちみてぇな名前をつけてくれたら良かったのに‥。
不本意だったんだけどさ、女の格好するしかどうしようもなかったんだよ。
兄貴たちの女共から逃げるために。
俺だけ歳が離れてるし。兄貴たちの女共が高校生でも、俺は小学生じゃん?スゲー嫌だった。
あっちは遊びのつもりでも、からかわれるのが本気で怖かった。
だから家の中では女装して弟だってバレないようにしてた。
女装が俺の鎧だった。
今は女装じゃないけど、まったく違うとは言えねぇかも。うまく説明出来ない‥でも俺は男だし、オカマじゃない。女になりたいとも思わない。
女にも男にも付きまとわれるのが嫌なだけ。‥コレ、うまい」

アボカドとエビのサラダを無心に食べる真央。

『うん。うん。いいよ。何を着てても真央ちゃんは真央ちゃんだよ。私は別に良いと思う。お代わりいる?』
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