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Re:again
第9章 【ウィークエンドはあなたと】
「葵はいつもひとりで図書館で本を読んだり、花壇で花の手入れをしていた。
学年首席で、あの見てくれで、掴みどころがない得体が知れないヤツ。
部活の時だけひとが違ったようになった。
スタメンから洩れたことはなかったし、試合中は獰猛そのものだったよ。
誰に何をされても、シカトされても葵は薄く微笑んでいた。
だから俺、気になって尋ねたんだ。
“何で笑ってるんだ?”って。そしたら葵は
《他に術がないから。時間が過ぎ去るのを待ってる》って答えた。
俺と同じだと思った」
『私‥学校のコト何も知らない…笑顔の葵しか知らない。葵はいつも笑顔で私のそばにいてくれたから』
「それで良かったんだろ葵は。それが良かったんだ。ミーコが何も知らず、そばにいてくれることが。
この部屋は葵にとってシェルターだったんじゃないか?
外の爆撃から身を守ってくれる唯一の」
長く油に浸かりすぎた唐揚げを掬い上げる。
「本当は俺、葵の“みちるさん”がミーコだって気づいてた。
葵の学生手帳に、ミーコの写真が挟まってるのを見たことがあるから。明らかに写真写りの悪い一枚だったけど、葵はずっとそれを肌身離さず持ってた。
教室で何があっても、葵は図書館で背中を丸めて料理のレシピを写してた。
花に水をやって草取りしてた。
アイツは妙なヤツだけど、俺は好きだよ。
葵は俺の格好について口を出さない。
たぶん、たまにスカートを穿いてるのも俺を気遣っての行動。
やってることはトンチンカンなんだけど、優しいんだよ。
ミーコが一番知ってるだろうけど」
傷ついた獣のようにひたすらに眠っていた私。
そんな私のそばで静かに見守っていてくれた葵。
葵もまた傷ついていたのだろうか。
私の知らないところで―微笑みの下に哀しみを、怒りを、悔しさをそっと隠して。
『うん…よく知ってる』
学年首席で、あの見てくれで、掴みどころがない得体が知れないヤツ。
部活の時だけひとが違ったようになった。
スタメンから洩れたことはなかったし、試合中は獰猛そのものだったよ。
誰に何をされても、シカトされても葵は薄く微笑んでいた。
だから俺、気になって尋ねたんだ。
“何で笑ってるんだ?”って。そしたら葵は
《他に術がないから。時間が過ぎ去るのを待ってる》って答えた。
俺と同じだと思った」
『私‥学校のコト何も知らない…笑顔の葵しか知らない。葵はいつも笑顔で私のそばにいてくれたから』
「それで良かったんだろ葵は。それが良かったんだ。ミーコが何も知らず、そばにいてくれることが。
この部屋は葵にとってシェルターだったんじゃないか?
外の爆撃から身を守ってくれる唯一の」
長く油に浸かりすぎた唐揚げを掬い上げる。
「本当は俺、葵の“みちるさん”がミーコだって気づいてた。
葵の学生手帳に、ミーコの写真が挟まってるのを見たことがあるから。明らかに写真写りの悪い一枚だったけど、葵はずっとそれを肌身離さず持ってた。
教室で何があっても、葵は図書館で背中を丸めて料理のレシピを写してた。
花に水をやって草取りしてた。
アイツは妙なヤツだけど、俺は好きだよ。
葵は俺の格好について口を出さない。
たぶん、たまにスカートを穿いてるのも俺を気遣っての行動。
やってることはトンチンカンなんだけど、優しいんだよ。
ミーコが一番知ってるだろうけど」
傷ついた獣のようにひたすらに眠っていた私。
そんな私のそばで静かに見守っていてくれた葵。
葵もまた傷ついていたのだろうか。
私の知らないところで―微笑みの下に哀しみを、怒りを、悔しさをそっと隠して。
『うん…よく知ってる』