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第9章 【ウィークエンドはあなたと】
真央の瞳をじっと見つめる。
瞳の色だけは、爽介や孝介と違った。
深いセピア色の穏やかな眼差しだった。

「‥隣の住人がミーコだって知って嬉しかった。ミーコなら俺の話をちゃんと訊いてくれるような気がしたから。
葵に包丁突き付けられた時には生命の危機を感じたケド…」

『ふふふふ…』

「笑い事じゃねぇよ!
葵は‥ミーコのコトになると感情が爆発する。あんなに嫉妬深いなんて思いも寄らなかったし、ミーコの前ではよく笑うから驚いた。ミーコがいないとすぐ泣くコトにもっと驚いた。
―ずっと葵と仲良くしやって欲しい。
イイ奴なんだ。ちょっと猟奇的だけど‥。
弟である以上、兄貴たちに肩入れしたいような気もするけど葵は親友だから‥まぁ、大変だろうケドそれぞれ大事にしてやって。
困った時は俺が力になるから」

『ありがとう。真央ちゃん』

中皿に付け合わせを盛り付ける。
大皿の上には数種類の唐揚げの山。
葵が作り置きしてくれていた茄子の挙げ煮浸しや数種類のおかずも冷蔵庫から取り出す。
ごはんをよそい、豆腐とワカメ、玉ねぎのお味噌汁をお椀につぐ。
真央に手伝ってもらい、テーブルに移す。

「いただきまーす」

すごい勢いで大皿の上の唐揚げが真央の胃袋に収まっていく。
真央は骨付きの塩コショウ味の唐揚げがたいそう気に入ったようで、骨から身を外すのに夢中になっている。

「‥なぁ、もしもミーコが兄貴たちどちらかと付き合っていたら、俺は葵になれたか?」

唇を油で濡らしながら真央は尋ねる。

『どういう意味‥?』

「俺は兄貴たちが羨ましい。俺は歳が離れてるから、ミーコは俺のコトを幼なじみだとは思わないだろ?ガキの頃しか知らないし。
そして葵が羨ましい。葵はミーコの親戚だし、この部屋に自由に出入り出来るから。
俺だけ何でも無いじゃん」

『真央ちゃんが来たい時は遊びに来ていいよ。真央ちゃんは‥そうだなぁ。隣の部屋の‥友達?』
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