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第9章 【ウィークエンドはあなたと】
「他人のモノを盗むのはな、泥棒って言うんだぜ?真央。
揃いも揃って弟ふたりがコソ泥で俺は哀しい。
覚えておけ。お前たちが道を踏み外すのなら、兄ちゃんは本気を出さざるを得ない。
……死ぬよりも辛い目に合いたいのか?
みちるはダメだ。わかったな?」

地を這うような低い声。
むせび泣きながら頷く真央。
私は真央のめくれあがったスカートを直してやり、楽器を背負わせる。
良かった‥下着は男の子のものを穿いているんだね。

「うっうっ‥練習行ってきます…ミーコ、またな…ライヴ来てね……」

爽介が無言で拳を振り上げる。
ギャッと悲鳴を上げ、真央が脱兎の如く駆け出した。

「……懲りねぇヤツ」

爽介が真央の耳付き帽子を忌々しげに握り潰す。

「いつまで突っ立ってんだ。乗れよ、うすのろ」

とぼとぼと助手席に乗ろうとしたら…

『えぇぇ?!マイコ?!』

「やっほー♪お疲れーみちる♪」

色っぽい真っ赤なノースリーブワンピースに身を包んだマイコ。
イイ女っぷりが半端ない。

「お前は後ろだ。淫乱女」

ムッとしながら後部座席に乗る。
会話が弾む、爽介とマイコ。
爽介は後ろにいる私をチラリとも見ない‥。

それから皆で居酒屋へと呑みに行く。
私を抜きにしてふたりは盛り上がっていて、なんとなく面白くない。

*****

どうやら爽介は病院で診てもらった様子。
あれだけ真央と追い掛けっこが出来たのだから、心配するほどではないのだろう。
私を呑みに誘いに来てくれたマイコと、迎えに来た爽介が鉢合わせしたらしい。
つまり偶然。
わかってはいるけれど‥。
知らない間にふたりが連絡先を交換していた。
しかも今日じゃなく、ずっと前に。
いつの間に?この前まではタカシ君経由でやりとりをしていたのに‥。面白くない。
なんだかとっても面白くない。

私に隠れてマイコが妙なコトをするワケがない。
マイコは見た目は派手だし男アソビもするけれど、私を裏切ったことは一度もない。

まぁ、私と爽介の関係が宙ぶらりんなのがいけないんだけど‥爽介が憎たらしい。
明らかにマイコにデレデレじゃん。
…昨日はあんなに私に甘えた癖に!!

*****
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