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第9章 【ウィークエンドはあなたと】
「‥オレが呼んだから。お仕事の前に仲直りしておいで」

葵はいつもの部屋着スタイル+ふりふりエプロン。
前髪をレースのヘアバンドで固定している。
キッチンから香ばしい香りがする。

パニックのまま顔を洗い、Tシャツとジャージを着せてもらい、背中を押されてドアを開けた。

部屋の前に爽介がいた。
白いタンクトップ、ゆるゆるのジーンズ、ビーチサンダル。
緑色のキャップを逆さまに被っている。
大きな黒いサングラスをしていて、不機嫌な表情を隠さない。

「‥イイ度胸してんな。お前。俺のこの世で最も嫌いなコトはシカ電だ。糞女。ムカつくムカつくとは思っていたが、最早我慢の限界だ。とりあえずドコから刺されたいんだ?」

指の関節を鳴らしながら爽介が畳み掛ける。

『‥ムカつくなら来なければいいじゃん』

「肥やしに呼ばれたんだよ。別に好きで来たワケじゃねぇ」

『‥なら帰れば?』

「あ゛ぁん?!」

『帰りなよ。ご苦労様でした。ほなさいなら』

踵を返して部屋の中に入ろうとする私を、爽介が阻む。

「‥なぁ、俺が何したよ?なんでそんなに機嫌が悪いワケ?
お前スゲー感じ悪いよ。マイコに謝ったか?」

この前までは“お前の友達”と呼んでいたのに、いつの間にか親しげに名を呼んでいる。
チリチリと胸が焦れた。

『…余計なお世話。アンタには関係無い』

爽介を冷ややかに睨み付ける。
一瞬、わずかに爽介が怯んだ。
すぐにいつもの不遜な態度に戻り、声に苛立ちが混じる。

「お前の悪い癖だよ。自分が考えているコトをちゃんと口にしないで、苛立ちを周りにぶつける。
友達は大事にした方がいい」

『うるさい!マイコは私の友達であって、アンタの友達じゃない!!
私には優しくしない癖に‥マイコと付き合えば?!』
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