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Re:again
第11章 【追憶の向日葵】
*****

葵を家まで送る。
葵は生まれ立ての子羊のように脚を震わせている。

「‥ヤリ過ぎ注意。腰が砕ける…」

交通安全のスローガンのような一言を呟く葵。

『泊まっていったら?』

本当は私が寂しかった。
今夜は葵といっしょに眠りたい。
葵の瞳が揺れる。

「‥そうしたいけど、手を出さない自信がない…」

『そんなにプルップルなのに?』

「‥こんなでもみちるちゃんに触れたいという気持ちはある。
今は頭がおかしくなってるから、簡単にダムが決壊しちゃう‥修行が足りない‥山に籠らなくちゃ…んぁ~…」

葵がまた髪の毛を掻きむしり始めた。

『‥出されても良いって言ったらどうする?』

「‥試さないでよ‥今日はオレ、普通じゃないんだから‥抱いてもイイけど、そうなったら壊れちゃうよ。何もかもが。
みちるちゃんの心がパリンって割れちゃうよ…」

*****

夏の夜の匂いを胸に吸い込みながら、ふらふら歩いた。蝉の声がする。
中学生の葵を、こうやって家まで送り届けていたことを思い出す。

先ほどまでの饗宴はまったくの夢のようだった。
昔と何ら変わりなく、ふたり並んで歩いているような気がした。
繋いだ葵の手のひらが頼もしかった。

「……つまずくことって本当に簡単。髪の毛の色が違う、瞳の色が違う。名前は日本人なのに外国人みたいだって。言葉にまごつくとすぐに揚げ足を取られた。ひとりがオレを変だと言ったら、皆がオレを変だって言った」

唐突に葵が口を開く。
前置きがなくても、学生の頃を邂逅しているのだとすぐにわかった。
初めて、私の知らない葵の裏側を語ろうとしていた。

「‥あの頃は自分が思ったコトを口にするのに時間が掛かった。
何かを言おうとすると、会話が終わってた。
口に出せない言葉はオレの中で凍り付いた。みちるちゃんだけだった。
言葉がまごついても、どもってもあなたは一度も笑わないでいてくれたね。
オレが喋り終わるまで、あなたは辛抱強く待っていてくれた。
山ほどのごはんをふたりで作って食べたね。たくさん食べれば大人になれるって。
お腹がいっぱいになって眠ったら、新しい朝になってるって。
朝日を浴びたら新しい自分が始まるって。
―オレ、大きくなったでしょう?…」
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