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第12章 【乱・反・射】
「軽蔑したか?」

『どうして?』

「何となく。お前は、俺のこういう部分を知ったら嫌がるんじゃねぇかと思ってたよ。
だってみちる、今の生活好きだろ?
あのボロアパートのセキュリティと壁の薄さはどうかと思うけど、楽しそうだよ。
スーパーも、男の従業員が多いのが気に入らねぇが、お前はリラックスしているように見える。
住む場所が大事なんじゃない。そこでどう生きるかが大事だろ。
苦労して身をやつしているんじゃないかって心配してたけど、お前が生き生きしていて拍子抜けした。‥ちょっと自分が恥ずかしくなった」

『‥あのアパートはね、問題だらけだけど日当たりがいいの。
洗濯ものがすぐに乾くし、キッチンに朝日が差し込むのも好き。
昔ながらの造りだから、窓も大きいし‥実家を思い出すの』

古い日本家屋の生まれ育った家。今はなき、我が家。

「‥辛い時にそばにいてやれなくて悪かった。お前のばあちゃん、厳しかったけど良いひとだったよな。
分け隔てがなくて―俺たち兄弟も良くしてもらった」

当主として厳格だった祖母。
私には甘かった祖母。

「‥あの家を出て、お前どこにいた?
俺、ずっとお前の行方を探してた。孝介もな。
あのボロアパートで暮らしていたのか?」

実家を出て私は―

『…そう。もうずっと、今の場所に住んでいるの』

咄嗟に隣県で暮らしていたことを隠した。
爽介は“そうか”と小さく呟く。

*****

私の身体を拭きあげた後、爽介も入浴を済ませた。
自分のことはそっちのけで、化粧水のパッティングをし、髪まで乾かしてくれる。

『本当にどうしちゃったの?あなたは誰?
いつもの鬼畜爽介はどこ?』

絡んでも、今日はノッてこない。
淡く微笑む爽介。

「これからは自分の気持ちに嘘をつかなくていい。もうみちるは俺のモノだし、お前には俺しかいないんだから。俺が守ってやらなくちゃ」

“お前には俺しかいないんだから”
何だか、急にみなし子になってしまったような気がした。

*****
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