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Re:again
第12章 【乱・反・射】
*****

爽介と次の約束を交わし、アパートの前まで送ってもらう。
“見ろ”とスマホを突き付けられた。
見事にアドレスには家族と私の名前しかなかった。

『仕事は?友達は?困るんじゃない?』

そう尋ねても、爽介は涼しい顔。

「別に死にはしない。誰がいてもいなくなっても。―お前は違う。代わりがいない。
この世でお前だけが、唯一俺を絶望させる。
…俺はもうお前の奴隷だ」

*****

アパートに帰宅し、しまいこんでいた葵の絵を完成させた。

近所の和菓子屋に赴き、菓子折を2つ購入する。
その足で職場に向かう。
手短に用件を済ませ、葵の自宅を訪ねた。
武家屋敷の赴きを残した日本家屋。
門を潜る前から夏の花の香りがした。

『こんにちは華絵さん。藍鉄お祖父様はご在宅ですか?』

朗らかな年配の家政婦さんに取り次ぎをお願いする。
日当たりの良い縁側で葵の祖父が腰掛けていた。御歳95歳。
白の着流し姿が粋だ。

『藍鉄お祖父様、みちるです。
お元気にされておられましたか?』

声を掛けても、返事がない。覗き込むと、うたた寝をしていた。

『お祖父様、お暑うございますね。お身体に障りませんか?』

「‥こんにちは、みちるちゃん…」

微睡みから目覚め、葵とそっくりな喋り方で、返答される。
好好爺然としているが、眼力は鋭い。
さすがは激動の時代に不動産界隈でならしていただけはある。

「‥アレはまだ、学校だよ。相変わらず土いじりをしとる。
ほら、月下美人。最近はあの花に夢中だ…」

縁側の前には淡い色彩でまとめられた、葵の畑と花壇。
小さな畑の脇に、鉢植えがあった。
つっかけを借り、背丈が高い鉢植えを覗く。
いくつか無花果の形に似た蕾を付けていた。

『もうすぐ花開きそうですね。蕾が大きくなっています』

葵の祖父が満足そうに頷く。
葵の両親はどちらも大学教授で外国に赴任している。
葵は長いこと、祖父と住み込みの家政婦の華絵さんといっしょに暮らしていた。

『葵さんにはお兄様がいらしたんですね。
最近、初めて知りました』

「‥言うておらんかったかの?上は‥鉄砲玉みたいなフシがある‥儂も長いこと会うとらん。気性が荒くてアレとはウマが合わん。
たったふたりの兄弟で歳も離れとるというのに‥」

会話をしながら葵の祖父がまたうたた寝を始めた。
部屋に入るために肩を貸す。
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