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Re:again
第12章 【乱・反・射】
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昼まで爽介と過ごし、“仕事がある”と告げて別れた。
嘘だった。
本来なら年末に調整する有給を退職の前に消化するために、休みが増えていた。
ひとりになりたい時、私は爽介に嘘をついてぷらぷら過ごした。

何も忘れた頃の反抗期ではない。
私は元々、こういう人間だった。
部屋には戻らず、動物園に向かう。

うだるような暑さの中、動物たちは死んだように眠っていた。
果物入りの氷の塊を抱える日本猿の群れ。
ストレスからか10円ハゲがあるレッサーパンダ。
フラミンゴは喧嘩をしていた。
みんな夏の乱反射にやられている。
暴力的な日差しが頭をおかしくさせるのだ―

不味いと県民皆が知っている園内の喫茶店に入り、イチゴ練乳のかき氷を注文する。
平日の昼下がり、客は私ひとり。
冷房が効いているとは言い難い薄暗い店内で、氷の粒をかじる。
この暑い中、美味しく感じないなんて中々反骨精神に満ちたかき氷だ。気に入った!

完食して代金を支払い、埃被ったオムライスのサンプルを見つめる。

―昔、高校生だったあの子は、あのオムライスを“美味しい”と喜んで食べた。
分厚すぎてちっとも美味しくない、ゴワゴワの卵焼き。べちゃべちゃのチキンライス。
それでもあの子は“美味しい、美味しい”“みちるさん、楽しいね”とはしゃいだ。
“また来ようね”と、お年玉で奢ってくれた。
指切りをして、手を繋いで帰った。
スキップをして葵は派手に転んだ。

レジ横に設けられたスペースで、メッセージノートに《ごちそうさまでした。美味しかったです。》と書き込む。
少し考えて《ドM》と記した。
卑猥な落書きだらけの古い簡易テーブル。
表面を撫でていると、テーブルの裏側にぐしゃぐしゃに丸められた紙切れが貼り付けられていた。
誰かの忘れものの中身をそっとあらためる。

従業員に“さようなら”を告げ、歩き出す。
背後では昔、あの子と乗ったちゃちな観覧車がくるくる回っていた。
さようなら。オモチャ箱のような世界。

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