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第13章 【さよならの向こう側】
『でも付き合うことになった晩も、別の女の子を部屋に呼んでたよ?』

《お迎えよろしく。居酒屋にいます。》

と、爽介にメールを打ち込む。
これくらいの腹いせは良かろう。

「そりゃ仕方ないわよ。スケコマシだもん」

あっけらかんと言い放つマイコの口振りに笑う。

「ひとの性格はそうそう変わらない。
だけど、爽介君はアンタのために努力するはず。
それを評価してやったら?爽介君はスケコマシなんだから仕方がない。
そしてみちるはそんな爽介君が好きなんだから仕方がない」

『仕方ないのかぁ。……葵、何してるのかな…』

葵の失踪のことも、マイコにはちらりと話していた。
マイコが遠くを見つめる。

「みちる、仕方ない。心は1つしかないんだから。分け合うことなんて出来ない。
みちるは悪くない」

マイコの手のひらが私の手の甲に触れる。

『‥以前マイコが言っていた、私の一番“大事にしなきゃいけないモノ”って結局何だったのかな?
自分で考えなって言われて、ずっと考えてるんだけど答えが出てこない。
陥落記念と贖罪の意味合いを兼ねて教えてくれない?』

マイコが唸る。
キスの値段を訊かれて辛いのかね。

「‥そんなの決まってるじゃん。“心”だよ。一番大事なモノなんて、みちるの心に決まってる。
みちるの心が爽介君を選んだんだから、しょうがない」

『心、ね……。
私‥良いのかな。こんなに身勝手で。他人に迷惑たくさん掛けて。嘘ばっかついて。他人のこと傷付けて。
自分の幸せ‥考えても赦されるのかな?』

マイコが席を立って私の横に座り直した。

「良いんだよ。生きてりゃこそじゃん。私はアンタが生きててくれて嬉しいよ。
今夜はひとりでいたくなかったから。
みちるの間抜け面に救われてる」

『今日‥何かあったの?どこに行ってきたの?』

「お墓参り。‥この季節は毎年辛いの。
記憶の波に溺れそうになる。
好きかも知れないって自覚した瞬間、突然相手に死なれちゃった。
―自殺だった。
今でも、どうして死んじゃったのかわからない‥」
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