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第13章 【さよならの向こう側】
*****

「‥ソウスケ、運転代わる…」

葵が運転手を申し出て、ナビのサポートのために真央が助手席に移る。
葵、免許持ってたんだ‥。
真ん中はマイコと早織ちゃん。
マイコ先生による美乳講座に真剣に耳を傾け、せっせとメモをとる早織ちゃん。

爽介が私の横に座った。
熱い手にキュッと左手を握り締められた。
指輪を撫で擦りながら、手のひらをくすぐられる。
どうやら閣下は仲直りをご所望らしい。
皆に見えないように指を握り返す。

薄く笑う気配。爽介が私の首元に顔を埋め、目蓋を閉じる。
耳元で、“お前が一番可愛いよ”と甘く囁かれる。
思わず赤面する私。

「えっ?えっ?みちるさんと安田君のお兄さんってそういう関係なんですか?!」

頬を染め、はしゃぐ早織ちゃん。

「小さな頃から仲良しなんだって」

マイコの笑い声。
その瞬間、ブウォン!と轟くアクセル音。
全員の身体が大きく左に傾いだ。
今度は右へと傾ぐ。
なんだなんだ?!
カーチェイスのように車と車の間をジグザグに縫う私たちの乗り物。
神業のドライビングテクニック!
もしや葵って…スピード狂?!

「ちょっ!ちょ!葵‥あっぶね~!飛ばすなよ!!」

真央のポニーテールがぐらぐらと揺れる。

「‥おい!もっと静かに運転しろよ。
スピード出しすぎだ!」

不機嫌になる鬼畜。

「‥スピードのその先を見せてやる!…」

―運転手以外の全員が、声が嗄れるまで絶叫した。

*****

「おいでませ~♪‥って、皆青い顔してどうしたの?
そしてやけに瞳がギラギラしているね、目黒君‥」

赤いタンクトップに黒いハーフパンツ、モノトーンの市松模様のスリッポンを履いた孝介が不思議そうな表情を浮かべる。

「ウルトラCっつうか‥重力を体感した。
俺、レーサーだけにはなりたくねぇ。
身体中に大きな負荷が掛かった。摩訶不思議アドベンチャーだった」

真央がよろよろとうずくまる。

「1つだけ言えることがある。
帰りは絶対、肥やしにハンドルを握らせんな。飛ばし屋の魂は永久に眠らせておけ。
寝た子を起こすな‥」

爽介の足元がフラついている。

「なんかよくわかんないけど、了解。荷物降ろしとくね~」

知らぬが仏の孝介。
葵は気持ちが昂っているのか、笛を吹いている。
ぴぃ!ぴぃ!ぴぃ!

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