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Re:again
第1章 【夢をみること】
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地下街に続く螺旋階段を下りる時、思いの外、濡れていることに舌打ちした。
この日のために新調したシフォンのワンピースが霞んで見える。
濡れないように傘を畳もうとするけれど、あれよあれよという間に濡れ鼠になってしまう。

“花散らしの雨”
遅咲きの桜も、今夜には散ってしまうことだろう。

白地に赤い小花を散らせた田舎くさいワンピースは、しみったれた私のような女には似合いのような気がしていた。
それでも大分受かれてはいたらしい。
洋服を新調したのも久々、ワンピースに袖を通したのも久々…久々過ぎてついついがに股になってしまう。
股がスースーする‥。

踊り場に取り付けられた窓の外は土砂降り―

出掛け際に丁寧にブローした髪がひどく乱れていた。
腰まである黒髪は、水を吸ってみすぼらしい。
ますますしみったれて見えるだろう。
ハァ、とため息をひとつ溢すと

「‥どけよ、ブサイク」

不機嫌な声が降ってきた。

黒いポロシャツ、ゆったりとしたジーンズを腰で履いた男性が肩をいからせ駆け降りて来た。
顔を盗み見ることは叶わなかった。
履き潰されたスニーカーが某ブランドのものだったので何となく目で追ってしまう。
階段を降りる度にスニーカーがキュッキュッと小さく悲鳴を上げた。
私を追い越して行く時、
低い声に似合わず男性が小柄であったので(少年‥?)と一瞬、訝しむ。
大股で通り過ぎてしまった今では確かめようもない。
男性の顔を、見たいと思った。
その背中をなぜか懐かしく感じたから‥。


―少年には不釣り合いな甘いムスクの残り香が、いつまでも胸の奥をざわつかせた。

雨の日は迷子のような心細さが付きまとう。

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