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Re:again
第13章 【さよならの向こう側】
「―兄貴がいない間に押し入って、お前のことを滅茶苦茶に犯してやる。
お前らの関係なんかすぐに破綻させてやる」
孝介が、自分のことを“俺”と呼ぶのを初めて耳にした。
驚いて仰ぎ見ると、孝介が涙を流していた。
乱暴な口振りなのに、孝介は私を離そうとしない。
静かにクローゼットの中を後にした。
孝介に抱かれ、地下迷宮を進む。
闇の獣の咆哮が、遥か彼方からこだまするようだ。
相変わらず感情の読めない眼差しで、孝介は涙を流し続けている。
「爽介だけはダメだ―
言ったよな?
爽介を選ぶ前に俺の所に来いって。
爽介がお前に隠していることを俺に訊けって。馬鹿だよ、みちるは。
あんなに忠告したのに。傷付くのはお前なのに…みちるが傷付くところなんて、見たくない」
『―孝ちゃん…泣かないで…』
孝介の頬に触れる。
どうして孝介が泣いているのか、私が何故、傷付くというのか―
わからないけれど、これは嘘の涙なんかじゃない。
孝介は酷く何かを案じている。
私と爽介の何かを―
孝介の心に触れられそうな気がした途端、心がまた遠ざかった。
「―――冗談だよ。僕が泣く?
そんなわけないじゃない」
頬が濡れたまま、孝介の顔にはいつもの笑みが戻っていた。
*****
孝介と手を繋いで小道を歩く。
孝介は言葉少なに、私が転ばないように気を使ってくれている。
「‥引っ掛けた女の子たちを呼んじゃおうかな」
孝介が肩をすくめた。
精一杯、おどけているのだと感じた。
『…可愛い子、いた?』
「可愛くない方がイイ。僕たちブス専だから」
含みのある言い方で孝介が忍び笑いを洩らす。
私が頬を膨らせると、片手で潰された。
「‥僕とお兄ちゃんだけじゃなく、男女な末っ子までブス専っぽい。
タイプの子をいっせーので指差したら、被ってんの。萎える…」
孝介が疲れた顔で天を仰ぐ。
笑っていると、頬をつねられた。
「笑い事じゃねぇよ。誰のせいだ、無自覚。真央は女嫌いだったのに、指差しするまでになるなんて‥穴兄弟は願い下げだよ。
僕たち血、繋がってるから。これ以上、繋がんなくて大丈夫。ノーセンキュー」
真央が開花した‥?
誰のせい‥?マイコか!
お前らの関係なんかすぐに破綻させてやる」
孝介が、自分のことを“俺”と呼ぶのを初めて耳にした。
驚いて仰ぎ見ると、孝介が涙を流していた。
乱暴な口振りなのに、孝介は私を離そうとしない。
静かにクローゼットの中を後にした。
孝介に抱かれ、地下迷宮を進む。
闇の獣の咆哮が、遥か彼方からこだまするようだ。
相変わらず感情の読めない眼差しで、孝介は涙を流し続けている。
「爽介だけはダメだ―
言ったよな?
爽介を選ぶ前に俺の所に来いって。
爽介がお前に隠していることを俺に訊けって。馬鹿だよ、みちるは。
あんなに忠告したのに。傷付くのはお前なのに…みちるが傷付くところなんて、見たくない」
『―孝ちゃん…泣かないで…』
孝介の頬に触れる。
どうして孝介が泣いているのか、私が何故、傷付くというのか―
わからないけれど、これは嘘の涙なんかじゃない。
孝介は酷く何かを案じている。
私と爽介の何かを―
孝介の心に触れられそうな気がした途端、心がまた遠ざかった。
「―――冗談だよ。僕が泣く?
そんなわけないじゃない」
頬が濡れたまま、孝介の顔にはいつもの笑みが戻っていた。
*****
孝介と手を繋いで小道を歩く。
孝介は言葉少なに、私が転ばないように気を使ってくれている。
「‥引っ掛けた女の子たちを呼んじゃおうかな」
孝介が肩をすくめた。
精一杯、おどけているのだと感じた。
『…可愛い子、いた?』
「可愛くない方がイイ。僕たちブス専だから」
含みのある言い方で孝介が忍び笑いを洩らす。
私が頬を膨らせると、片手で潰された。
「‥僕とお兄ちゃんだけじゃなく、男女な末っ子までブス専っぽい。
タイプの子をいっせーので指差したら、被ってんの。萎える…」
孝介が疲れた顔で天を仰ぐ。
笑っていると、頬をつねられた。
「笑い事じゃねぇよ。誰のせいだ、無自覚。真央は女嫌いだったのに、指差しするまでになるなんて‥穴兄弟は願い下げだよ。
僕たち血、繋がってるから。これ以上、繋がんなくて大丈夫。ノーセンキュー」
真央が開花した‥?
誰のせい‥?マイコか!