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第13章 【さよならの向こう側】
*****

マイコ・孝介・真央を寝かせ、夕食まで自由時間だと爽介から葵たちに告げてもらう。

爽介とふたりでビュッフェで軽く朝食を済ませる。
爽介は長男の権力を振りかざし、ヴィラ内でひとり部屋を確保していた。
いつものように、堕落した刻を爽介と過ごす。
セックスはしなかった。
“私以外の女に裸を見せない”という約束を守っているのか、爽介は旅先で極力、全裸にならなかった。
上半身だけ脱いで、私の身体をずっと触っていた。

「あのふたり‥昨日はどう過ごしたんだろうな?今日は何して過ごすんだろうな?」

爽介が口元だけ笑みを閃かせ、私を見据える。
こんな時は、何も答えない方がいい。
爽介には嘘は通じない。
黙っていた。

「―気になってしょうがないか?
だから昨日はイカなかったのか?」

爽介の笑みは消えない。酷い男。
そして同じか、それ以上に私も酷い女だ。
抱えあげられ、爽介の裸の胸に頬を寄せる。

『ねぇ、爽介―元気ない?
何か今日、変だよ……』

元々考え込むようなところが爽介にはあるけれど、昨日から浮き沈みが激しい。
今日はアルコールも呑まず、煙草ばかり噴かしている。
どこか遠いところを眺めているような、心ここにあらずのような雰囲気だ。
ふたりでいるのに、ひとりぼっちの気分―

爽介がぼんやりとした表情で私を抱き締める。
わかりにくい男の側面がちらりと顔を覗かせ、歯痒い。

「―なぁ。お前、俺がどんな男だとしても、そばにいてくれる?
俺のことを好きでいてくれるか?」

*****

昼下がり。
爽介が眠りについたところで、夕食の支度をすることにした。
カレーを作ろうと思い立つ。
美味しいモノを食べたら、きっと爽介も元気になってくれるに違いない。
寝入っている皆を起こすのは気の毒に思い、置き手紙を残してヴィラを出た。

施設内のスーパーへ食材を買い出しに向かう。
外国人観光客もいるからか、果物や野菜など珍しいモノが並んでいる。
林檎をカゴに入れ、ちょっと考えてから牛肉と鶏肉を選ぶ。
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