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Re:again
第13章 【さよならの向こう側】
「‥やーめた。怖い顔をキープするのって難しい‥笑っていよう。最後の夏なんだから」

葵が少しだけ、哀しげに目を伏せて笑った。

*****

ひとりで仕込むつもりだったのだけれど、葵が手伝ってくれることになった。
葵に黒いギャルソンエプロンを借り、下拵えに取りかかった。

『早織ちゃんは?』

私といっしょにいて嫌がらない?

「‥部屋でレジュメ作り。アイツもカテキョしてるし、問題集を作ったり‥忙しい。
心配しなくても大丈夫…」

葵が早織ちゃんのことを“アイツ”と呼んだことと、“心配しなくて大丈夫”と言い放たれたことに胸の痛みを覚える。
葵と早織ちゃんだけの時間が流れているのだと思うと、胸が騒いだ。

「‥オレ、飴色玉ねぎ担当。あなたは他の切って。何かあったら、言って…」

背中を向け、それぞれの作業に没頭する。
小気味良い音を立てながら、葵が玉ねぎを刻む。
私は人参とじゃがいもの皮を剥く。

「‥昨日のワンピース、可愛かったね。
オレは金魚、嫌いじゃないよ…」

“女アソビ”デビューの第一歩なのか、葵が耳を真っ赤に染めて囁く。

*****

気まずさは時間が経つ内に薄れ、せっせと料理に励んだ。
何も言葉に出さなくても、私がしたいことを葵はすぐに察してくれる。
段取り良く物事が運び、すべての作業が終わったのは15時を過ぎた頃だった。
甘口と辛口のカレー2種類を煮込み、オレンジママレードを隠し味に加えたスペアリブを葵が仕込んだ。
マスターピースやとうもろこしを茹で、ツナマヨネーズで和えたサラダも完成。
葵がプチトマトに黒ゴマで顔を書いた“トマパイ星人”なる宇宙人を創造した。
主食は母乳‥馬鹿だ。

コトコトと煮込まれるずんどう鍋の音を聞きながら、葵のスナック菓子をつまみ食いした。
ママレードジャムを炭酸水で割った飲み物にレモンを浮かべて、ふたりで回し飲みする。

「‥帰るまでにカレーのレシピ教えて。
もう食べられなくなっちゃうから」

俯いて呟く葵に、掛ける言葉が見つからない。
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