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第13章 【さよならの向こう側】
*****

「‥あなたってさ、雨女?…」

葵がため息をつく。
古いトンネルに入った途端、更に雨足は酷くなった。
携帯を開く。圏外。
9時か…。
朝方だというのに、空は厚く黒い雲に覆われ、薄暗い。
地下水が染み出てくるのか、それとも雨水なのか‥トンネルの天井からぴちゃん‥ぴちゃん‥と雫がこぼれ落ちる。
壁も同様に濡れている。―不気味だった。

山間近くで空が忘れな草色に光った。
すぐさま、白い閃光が走る。
2分置きに轟く雷鳴に身をすくませる。

「‥こっちにおいで。濡れてない場所を探そう。暫くやみそうにないから…」

葵の手を掴み、小走りでついていく。
トンネルの中は静まりかえっていた。
不規則な水音と私たちの足音以外、何も聞こえない。

使われている気配のない、人々の記憶から忘れ去られたような場所。
所々激しく破損し、瓦礫が積み重なっていた。
トンネルの全長は約1kmほどだろうか。

歩き続ける内に、入口も出口も遠ざかってゆくように錯覚する。
遠くで細い光が見えることは確認出来るのに、自分がどこを歩いているのか、どこに向かっているのかを見失ってしまいそうになる。
瓦礫に埋もれた“世界の果て”を葵と、さすらう。

言いようのない不安は拭いきれなかったが、葵といっしょであることだけが救いだった。
葵は怯む気配もなく、トンネルの奥へ奥へと進んでゆく。

「‥イイモノ発見。これに座りなよ…」

トンネルの道端に、比較的新しいゴザが落ちていた。ざっと見たところ、汚れは見受けられない。
表面を払い、地面に敷いた。
あたりを見渡すと、そこだけは浸水被害を免れていた。
私はゴザに腰掛け、葵が地べたに座ろうとする。

『葵もこっちにおいでよ。お尻が冷えちゃうよ』

葵が困惑した。
暫く間をおいて、“お邪魔します。”と、葵が腰掛ける。
気まずい沈黙が流れた。

『ねぇ‥爽介と話していた“もう1つの約束”って何?』

葵が瞬きをする。

「‥内緒。“男と男の約束”だから、教えない…」

外は大雨。
薄暗いトンネルの中、相手を過度に意識してしまっている。
お互いの鼓動が手に取るように感じられた。
意味もなく、小さなため息を交互に吐いた。

『初めて逢った日も、雨が降っていたね…』
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