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Re:again
第13章 【さよならの向こう側】
『‥私、捨てられてないよ。
爽介はお仕事に行ったんだよ』

「‥オレもいるし、コウスケだっている。
あなたをひとりにして、あの男は行っちゃった。
オレなら行かない。
ずっとあなたのそばにいる。それか、連れて行く。
―あなたと何かを天秤に架けようなんて、思ったこともない。
比べるまでもない。
あなたと仕事を天秤に架けて、ソウスケは仕事を選んだ。
それはきっと、正しい。大人の判断。
……でも、ソウスケがあなたと何かを天秤に架けた瞬間から、あなたは捨てられているんだよ。
オレと同じ捨て子だよ」

葵はトンネルの壁を見つめながら、一息に語り掛けた。
握り締めていた手を離し、膝を抱えて顔を埋めた。

『捨て子じゃないもん‥爽介は帰ってくるもん…』

私の肩に葵が頬を擦り寄せる。
坊主頭のちくちくした感触があった。
以前の柔らかな髪の毛の感触が恋しかった。

「―今ならオレ、あなたの言葉の意味がわかる。オレも“何か”を喪ったからね。
これから先、喪うばかりだろうから。
‥泣かないで。
もう、意地悪言わないから‥。
きっと、大事な用事だったんだよ。
捨て子同士、仲良くしようよ。
オレたち、“忘れ去られた世界の捨て子”だよね…」

*****

雨はいっこうに止まなかった。
雨の中を走って帰ることも考えないではなかったが、トンネルの中にいた。
葵とふたりきりで過ごすことに、時折、息が詰まるような胸の苦しさを覚える。
同時に、奇妙な安心感もあった。
心はマーブル模様のまま、ふたり共黙ってくっついて過ごした。

‥きゅるきゅると高い音が鳴った。

『今の何?!ツチノコ?!』

慌ててあたりを見回す。
ツチノコを見つけたら何に入れよう。
バッグの中に収まるかな?
収納上手になれるかな?

「‥オレが犯人です‥お腹空いちゃった…」

ぽっと頬を赤らめ、葵が俯く。
またきゅるるとお腹が鳴った。

『イイモノあるよ!ほら、あーんしてごらん』

スケッチ散歩のために、昨夜の残りご飯でおにぎりを握ってきたのだ。
餌付けをした。
葵は嬉しそうに口をぱくぱくする。
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