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第13章 【さよならの向こう側】
*****

ヴィラに戻ると、半泣きになった真央に飛び付かれた。
葵とは別々に迷子になっていたのだと口裏を合わせた。
散々心配を掛けたらしい。

葵の読み通り、一部地域では土砂崩れがあったと言う。
このヴィラも雷が墜ち、停電になったそうだ。

孝介に怒鳴りつけられた。
マイコが笑いながら間に入ってくれたけど、心底私たちの無事を案じていたことが窺える。
背中を何度も何度も擦られた。

シャワーを浴び、カップラーメンを食べた後にベッドに入った。
葵も部屋に戻った。
真央以外の3人は買い出しに出掛けていったようだ。
トントンとドアを叩く音がする。

『起きてるよ‥』

眉毛をハの字にした真央がドアの隙間から覗いている。

「‥入ってもイイ?」

『どうぞ』

真央はパステルグリーンの膝丈ロンパースを着ていた。
ポケットにピンクのサテンリボンが縫い付けられている。
女の子用の可愛いルームウェア。
白クマの顔のポシェットを首から下げていた。
フードを被り、脇からおさげ髪を垂らしている。
ベッドに横になった私の顔を覗き込むように、床で胡座を掻いた。
太股やふくらはぎはか細く、色が白い。
女の子なのか、男の子なのかさっぱりわからない。
どちらでも真央のことが好きだと思った。

『そんなとこに座らないでココに座りなよ』

「‥そんなこと、男に言っちゃダメだぞ。俺もちゃんと付いてる」

女の子にしか見えない、その薔薇色の頬をつついた。
真央が頬を膨らませた。

「‥爽兄がいなくて寂しい?
本当に葵といっしょじゃなかったのか?」

ささくれが出来た指を躊躇いがちに真央が私の頬へと伸ばす。
弦で傷付けてしまうのか、真央の指は切傷が多い。傷とマメに覆われた手のひら。
綺麗だと思った。
どんな道であれ、打ち込めるものを持っているひとは幸せだ。

『‥寂しくないよ。
葵とはたまたま。ひとりぼっちで迷子になってたの』

「俺も連れて行けば良かったのに」

上半身をベッドの上に乗り上げて、真央が自身の三つ編みで私の腕をくすぐった。
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