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第13章 【さよならの向こう側】
「‥ずっとそばにいたら、いつかオレを見てくれると思っていたから‥いつかオレのためだけに笑ってくれると信じていたから‥だから無理に関係を変える必要なんてないと思ってた。
ずっといっしょにいられると思っていたから‥オレがあなたのそばから離れない限りは。―見捨てられるなんて夢にも思わなかったから……」

葵の手のひらが私の横腹を這い、太股を撫でた。
葵の指先はずっと震えていた。
私の身体に変化は訪れなかった。
葵は小刻みに震えながら、私の身体を撫で擦った。
まるでそうしていないと、ふたりが生き絶えてしまうと頑なに信じているかのように。

『―葵‥止めようよ…』

苦しむ葵の姿を見ているのが辛い。
現に、私の身体どころか、葵の身体にも変化が訪れていない。
嫌というほどわかっているはずなのに、葵は泣きじゃくりながら無理に挿入しようとした。
私の手で扱かせようとしても、葵自身に変化はなかった。

「……こんなのはどう?あなたにオレのこどもを宿すっていうのは?
さすがにあの男もあなたを見限るでしょ。
こんなのはどう?あなたたちとオレがいっしょに暮らすっていうのは?
案外うまくいくかも知れない。うまくいかなくても問題はない。
あなたがあの男に見捨てられたら、ちゃんとオレが拾ってあげる。コレで元通り。こんなのはどう‥?」

ありとあらゆる“あり得ないこと”を囁きながら、葵が私の胸に顔を押し付けて泣いた。
私を抱くことが出来ずに、葵はもがいていた。
震える葵の身体を私はそっと抱き締める。

『もういい‥葵、もういいよ‥大丈夫だから…』

「良くなんかない!大丈夫なんかじゃない!勃たなくったって、方法はいくらだってある‥既成事実をつくることなんて簡単だ。
お互いに裸で朝まで寝ていたら、“何もなかった”なんて言っても、誰も信じないよ。誰かに目撃させるだけでイイ」

『葵がそんなこと出来るわけない―』

「出来る!何だってする!
―あなたの知ってるオレはもう、死んだよ!」
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