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第13章 【さよならの向こう側】
「―誰に訊いた?」

それまで穏やかだった孝介の表情が一変した。
何も答えない私に業を煮やし、ベッドの中から引き摺り出される。
幸いなことに私は部屋着を身に付けていた。

「―はっきり言え。
誰がお前にそんなことを吹き込んだ?」

名前を口に出せば、孝介はその相手を半殺しにでもしかねないと思った。
普段温厚な仮面を貼り付けている分、ある意味、殺気立った孝介は爽介よりも恐ろしいものがあった。
爽介は最後の一線で踏み留まるだろうけれど、孝介はその一線すらもひょいと乗り越えてしまうような危うさを感じる。

「真央か………」

私の身体を解放し、孝介が部屋を出て行こうとする。

『待って!真央ちゃんは悪くない!
心配してくれただけなの!』

制止は耳に入れず、孝介が部屋を飛び出した。

「真央!!!」

後を追うと、真央がリビングのソファーから転げ落ちていた。
真央の上に孝介が馬乗りになり、無言で殴り付けた。
葵が止めに入る。
マイコと早織ちゃんの姿はなかった。

「…なんで余計なコトをみーちゃんに吹き込んだ?」

真央の首を締め上げる剣幕で、孝介が詰め寄る。

「‥コウスケ!落ち着きなって…」

間に入ろうとする葵を、孝介が一喝した。

「他人の家の事情に首を突っ込むな!
コイツは家族を売るような真似をした!」

真央の顔が険しくなった。

「‥どういう意味だよ?兄貴たちの方がおかしいよ…一番大事なコトをどうして話さない?言えばミーコが逃げるからか?
当事者のはずなのに、どうしてミーコをのけ者にするんだ。
‥爽兄がドコにいるのか、どうしてソコにいるのか、誰といっしょにいるのか、ちゃんとミーコに話してやれよ……
爽兄も、孝兄も間違ってる!」

「‥僕たちが口を挟むことじゃない。
爽ちゃんとみーちゃんがふたりで話し合うべきだ」

「このまま俺が黙っていれば、ずっとミーコを騙すつもりだったのか!
ミーコを日陰の女にでもするつもりだったのか!」

孝介と真央が掴み合う。
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