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第13章 【さよならの向こう側】
「‥何の話だよ。日陰の女って何?何をみちるちゃんに隠してたって言うの?…」

孝介と真央の話を漏れ聞きし、葵の顔色が変わった。

「お前には関係ない!」

孝介が葵を怒鳴りつける。

「‥関係ある。ねぇ、みちるちゃん。
何をマオから訊いたの?…」

『―――――』

「お前は部屋に戻ってろ!」

孝介に背中を押され、部屋に戻った。
それから暫く、3人の怒鳴り合う声が聞こえた。

*****

「―みーちゃん、荷物をまとめな。帰るよ」

幾分落ち着きを取り戻した孝介が、強ばった表情のまま促す。

『―皆、帰るの?』

「僕たちだけ先に帰る。どうせ爽ちゃんに会ったって、どんな顔すればいいかわかんねぇだろ?
アイツらの車は手配したから大丈夫。
真央も一応免許持ってるし、どうにかするでしょ。マイコちゃんたちにも電話したから気にしなくてイイ。さっさと支度しな」

『でも……』

「まわりのコトは心配しなくてイイ。自分のコトだけ心配しろ。
僕も荷物、取ってくるから」

孝介が部屋を出ていき、のろのろと荷物をまとめた。
すべてを詰め終わり、ベッドに腰掛け、左手の薬指を見つめていた。
昨日からずっと、指輪はサイドテーブルに置いたままだった。

ドアを叩く音がする。

「……………」

ドアが薄く開き、暗い表情をした真央が顔を覗かせた。
唇の端を怪我している。

『‥大丈夫?』

バッグの中から絆創膏を探す。
真央が私の動作を制した。

「―俺、余計なコトをした?
孝兄は俺がこどもだから何もわかっていないって言うんだ‥俺がミーコを傷付けたのか?」

孝介には孝介の考えがあり、真央には真央の考えがある。
考え方に違いがあるにせよ、どちらも私のことを案じてくれていることはわかる。

『ううん―教えてくれて良かったよ。
びっくりして、慌てちゃっただけ。
先に帰って、頭を冷やして爽介と話し合うから。真央ちゃんは悪くない。私がいけないの』
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