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Re:again
第15章 【薔薇色の日々】
*****
部屋の鍵を返すために葵の祖父を訪ねた。
『藍鉄お祖父様、おはようございます』
葵の祖父は、庭先で身体を動かしていた。
顔色も良く、元気そうでこちらまで嬉しくなる。
「‥みちるちゃん、おはよう」
私の声に気付き、葵の祖父が破顔した。
「‥今日だったのかね…」
青いポリバケツを見つけて、葵の祖父が呟く。
優しい瞳をしていた。
『はい。鍵をお返ししに伺いました。
今まで大変お世話になりました』
頭を下げ、茶封筒に入れた鍵を手渡す。
葵の祖父が私の頭を大きく撫でた。
「‥たまには顔を見せなさいよ。
あなたは孫のようなものなんじゃから…」
葵の祖父の言葉に微笑む。
「‥捨てておこうか?…」
その視線が“あおいのおかしばこ”に注がれていることに私は焦った。
『いいえ!ごみではありません!』
口にしてから“しまったな”と思う。
このままでは本当に、捨てられなくなってしまうような予感がした。
「ほうかの……」
葵の祖父はヒャヒャと笑う。
「‥みちるちゃんはいい顔になった‥けれど何か迷いがあるようじゃの。
思い煩うのは良くない。べっぴんさんが台無しじゃ…
“心のままに生きなさい”」
『はい…』
「‥“忘れもの”があった時は取りにきなさい。
“忘れもの”は持ち主の手に返ることを、ずっと待ち続けるものだからのう…」
*****
畦道をぷらぷらと歩いた。
黄金色にたなびく稲穂に目が奪われる。
秋風が涼しい。
赤トンボの姿を探す。
「みちる!」
私の名を呼ぶ声に耳を疑う。
『爽介‥?』
爽介と孝介が大量のビニール袋を持って、歩いていた。
『どうしたの?帰ったんじゃなかったの‥って顔、どうしたの?!』
カワイイ顔が、ガーゼや絆創膏で塞がれていた。
「ちょっとな‥」
爽介が視線を泳がせた。
孝介は思い当たることがあるのか、笑いを噛み殺している。
爽介が孝介の肩を押した。
爽介は白いTシャツにゆるゆるのジーンズに赤いキャップ、孝介は黒い長袖のトップスにブラックデニム。
透かし編みのニット帽。
ふたりともいつもと同じような雰囲気で、これまでで一番自然体に見えた。
部屋の鍵を返すために葵の祖父を訪ねた。
『藍鉄お祖父様、おはようございます』
葵の祖父は、庭先で身体を動かしていた。
顔色も良く、元気そうでこちらまで嬉しくなる。
「‥みちるちゃん、おはよう」
私の声に気付き、葵の祖父が破顔した。
「‥今日だったのかね…」
青いポリバケツを見つけて、葵の祖父が呟く。
優しい瞳をしていた。
『はい。鍵をお返ししに伺いました。
今まで大変お世話になりました』
頭を下げ、茶封筒に入れた鍵を手渡す。
葵の祖父が私の頭を大きく撫でた。
「‥たまには顔を見せなさいよ。
あなたは孫のようなものなんじゃから…」
葵の祖父の言葉に微笑む。
「‥捨てておこうか?…」
その視線が“あおいのおかしばこ”に注がれていることに私は焦った。
『いいえ!ごみではありません!』
口にしてから“しまったな”と思う。
このままでは本当に、捨てられなくなってしまうような予感がした。
「ほうかの……」
葵の祖父はヒャヒャと笑う。
「‥みちるちゃんはいい顔になった‥けれど何か迷いがあるようじゃの。
思い煩うのは良くない。べっぴんさんが台無しじゃ…
“心のままに生きなさい”」
『はい…』
「‥“忘れもの”があった時は取りにきなさい。
“忘れもの”は持ち主の手に返ることを、ずっと待ち続けるものだからのう…」
*****
畦道をぷらぷらと歩いた。
黄金色にたなびく稲穂に目が奪われる。
秋風が涼しい。
赤トンボの姿を探す。
「みちる!」
私の名を呼ぶ声に耳を疑う。
『爽介‥?』
爽介と孝介が大量のビニール袋を持って、歩いていた。
『どうしたの?帰ったんじゃなかったの‥って顔、どうしたの?!』
カワイイ顔が、ガーゼや絆創膏で塞がれていた。
「ちょっとな‥」
爽介が視線を泳がせた。
孝介は思い当たることがあるのか、笑いを噛み殺している。
爽介が孝介の肩を押した。
爽介は白いTシャツにゆるゆるのジーンズに赤いキャップ、孝介は黒い長袖のトップスにブラックデニム。
透かし編みのニット帽。
ふたりともいつもと同じような雰囲気で、これまでで一番自然体に見えた。