この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Re:again
第15章 【薔薇色の日々】
「これから、兄弟揃って【残念でしたの会】をするんだ」
孝介がビニール袋を翳す。
私の勤め先で買い物を済ませたようだ。
『残念でした‥?何かあったの?』
爽介が咳払いをした。
「何でもない。こっちの話」
孝介がくつくつと笑う。
「‥酒盛りついでに間抜け面を見に来たんだよ」
爽介が顎をしゃくる。
尊大な態度がいつもと同じようで―
この前まで見せてくれていた“恋人の顔”とはどこかが違っていて、泣きたいような笑いたいような気分になった。
どこまでも不器用な男。
そして、どこまでも優しい男だ。
爽介が“あおいのおかしばこ”を見て、フッと笑った。
「―グズでのろまなヤツ。おい。俺がお前のケツを拭くのはこれが最後だ。
耳の穴かっぽじって聞け。聞き漏らすなよ。
…俺がお前を抱いたのも、アオイがお前を抱かなかったのも、同じ理由だ」
『爽介…?』
「“意味がわからない”とは言わせない。
お前はこの俺のキスを拒んだ、記念すべき第一号だからな」
爽介が意地悪そうに口を歪めて笑う。
孝介はそっぽを向いて、聞いていないふりをした。
「…船は波に浮かべるだけじゃダメだ。
みちる、舵は自分でとれ。お前はもう“大人”なんだから」
驚いて目を見張った。
「‥お前の船旅がいい旅であることを祈るよ」
『爽ちゃん……』
自然と、唇からその呼び名がこぼれていた。
この夏どうしても口に出せなかった、かつての呼び名―
大好きだった、私の幼なじみ。私の初恋。
爽介と孝介が驚き、同時に微笑んだ。
その表情はそっくりで…仲の良い兄弟そのものだった。
『爽ちゃん、孝ちゃん。ありがとう。バイバイ…またね!』
ふたりの笑顔を目に焼き付けておきたかったから―
笑顔のままで別れたかったから…振り返らずにぐんぐん歩いた。
*****
「………………」
「ねーぇ、爽ちゃん。泣くくらいなら、今から追い掛けてさらってズッコンバッコンハメまくったら?
そういうの得意でしょ。考える力を奪う。
何だかんだ言って女ってそういうの弱いじゃない。
みーちゃんが好きなんでしょ?」
「‥じゃあ、お前は何故そうしない?」
「………………」
孝介がビニール袋を翳す。
私の勤め先で買い物を済ませたようだ。
『残念でした‥?何かあったの?』
爽介が咳払いをした。
「何でもない。こっちの話」
孝介がくつくつと笑う。
「‥酒盛りついでに間抜け面を見に来たんだよ」
爽介が顎をしゃくる。
尊大な態度がいつもと同じようで―
この前まで見せてくれていた“恋人の顔”とはどこかが違っていて、泣きたいような笑いたいような気分になった。
どこまでも不器用な男。
そして、どこまでも優しい男だ。
爽介が“あおいのおかしばこ”を見て、フッと笑った。
「―グズでのろまなヤツ。おい。俺がお前のケツを拭くのはこれが最後だ。
耳の穴かっぽじって聞け。聞き漏らすなよ。
…俺がお前を抱いたのも、アオイがお前を抱かなかったのも、同じ理由だ」
『爽介…?』
「“意味がわからない”とは言わせない。
お前はこの俺のキスを拒んだ、記念すべき第一号だからな」
爽介が意地悪そうに口を歪めて笑う。
孝介はそっぽを向いて、聞いていないふりをした。
「…船は波に浮かべるだけじゃダメだ。
みちる、舵は自分でとれ。お前はもう“大人”なんだから」
驚いて目を見張った。
「‥お前の船旅がいい旅であることを祈るよ」
『爽ちゃん……』
自然と、唇からその呼び名がこぼれていた。
この夏どうしても口に出せなかった、かつての呼び名―
大好きだった、私の幼なじみ。私の初恋。
爽介と孝介が驚き、同時に微笑んだ。
その表情はそっくりで…仲の良い兄弟そのものだった。
『爽ちゃん、孝ちゃん。ありがとう。バイバイ…またね!』
ふたりの笑顔を目に焼き付けておきたかったから―
笑顔のままで別れたかったから…振り返らずにぐんぐん歩いた。
*****
「………………」
「ねーぇ、爽ちゃん。泣くくらいなら、今から追い掛けてさらってズッコンバッコンハメまくったら?
そういうの得意でしょ。考える力を奪う。
何だかんだ言って女ってそういうの弱いじゃない。
みーちゃんが好きなんでしょ?」
「‥じゃあ、お前は何故そうしない?」
「………………」