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Re:again
第15章 【薔薇色の日々】
二重底の下には、おびただしい量の短冊が隠されていた。
まるで呪いのように、底一面が【願い事】だらけだった。

『凄い量……』

「猟奇的だね。背筋がゾッと寒くなるよ―
【みちるさんが笑顔でいられますように】…【みちるさんがごはんを食べてくれますように】…【みちるさんが恐い夢をみませんように】…【みちるさんが早く元気になってくれますように】…【みちるちゃんとキス出来ますように】…【みちるちゃんがヤラせてくれますように】…ちょいちょい煩悩が混じってるな!
なになに?【みちるちゃんとずっといっしょにいられますように】…【みちるちゃんが好きなひとと幸せになれますように】……みちるのことしかだらけ。
全部みちるに関する願い事だよ」

“願い事書かないの?”と、尋ねた七夕の夜。

―オレはもう書いた。

葵はそう、微笑んでいた。
いったいこれだけの量を、いつの間に書いていたのだろう。
大きな背中を丸めて、コツコツと短冊を書く葵の姿が容易に想像出来る。

「口に出すことは簡単だったはずなのに…
葵君はどんな気持ちでそばにいたんだろうね…。みちるの幸せだけを祈って……」

きっと5年という月日をかけて書き綴ったに違いない。
“きみは私のことを忘れてしまう”
そう呟く私のそばで、気付かれないようにそっと。

小さい字を書くのが苦手な癖に、精一杯小さな字でみっちりと綴られていた。
‥いつもの《あおい》ではなく、《葵》と書かれていた。
堂々とした男らしい字だった。

途中で、二重底の秘密に私が気付く可能性もあった。
何も気付かずに捨ててしまう可能性もあった。
葵が心変わりしてしまう可能性もあった―

そんな可能性を、考えなかったはずはない。
私たちの関係に、名前はなかった。

あらゆる可能性を考えた上で、葵は願い事を綴ったに違いない。

『どうしよう……』

「あー!もうッ。アンタは本当にイライラする!どうもこうもないよ!
みちるが《これから》どうしたいか、それだけでしょ!
早急に迅速にちょっぱやで行動しなさい!
葵君に電話しなさい!」

『でも…この前葵にお別れを告げちゃったよ?
それに葵、アメリカに行っちゃうみたいなんだけど……』
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