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Re:again
第15章 【薔薇色の日々】
『あっ‥葵??』

農業用コンバインが未だかつて目にしたことがない猛スピードで突進してくる。

「‥行かせないぃぃぃぃぃ!!!!…」

『ギャッ!!』

神業ドライビングテクニックを駆使し、暴走コンバインが私の目の前に止まった。

「行かせないんだから!!!!」

コンバインから飛び降り、葵が道の前に立ちはだかる。
白い半袖の肌着、黒いヤッケズボン、麦わら帽子を被っている。
黒い長靴が泥で汚れていた。

「ソウスケのとこなんか行かせない!!!」

『いや‥爽介とはね、別れたよ?』

「‥‥‥そうなのぉ?‥でもさっき、みちるちゃんのお部屋に行ったら郵便受けにガムテープ貼ってあったけど…」

『うん。引越したの』

「ドコ?!!ヤダッ!!ドコにも行かないで!!!」

『‥ここから10分くらいのアパート』

「‥‥‥なぁんだぁ…ソウスケが今からみちるちゃんをNASAに連れて行く、みちるちゃんを売り飛ばしてバカラ賭博で一山当てるって言うから慌てて飛んで来たのに……」

物騒かつ壮大な計画だな…私、NASAにドナドナされちゃうの?

『‥稲刈りしてたの?』

「‥そう!研究所でね、アイガモ農法で育てたの。見て!…」

黄金色の稲穂を葵が掲げた。

『綺麗だね』

私が微笑むと、葵は麦わら帽子を脱いで、タオルをほっかむりした。
照れているのだ。

『葵、泥が飛んでるよ』

頬に跳ねた泥を拭ってやる。葵の瞳が揺れた。

「……みちるちゃん―
約束、思い出していたんだよね?
オレの誕生日、動物園に行ったでしょう?…」

*****

―二十歳を迎える頃にはきっと、きみは私の顔も名前もすっかり忘れてしまっているよ。

16歳の葵に、私はそう告げた。
間違いが起きないように一線を引いた。
葵が無事に、私の元から遠ざかっていくように。
私のことなど綺麗さっぱり忘れてしまって、思い出すこともないように。
仮に思い出したとしても、胸を痛めることがないように。

―そんなコト、ない。
オレはみちるさんを忘れたりしないよ。

葵は食い下がらなかった。
絶対に忘れない。証明してみせる、賭けをしようと。

―二十歳になっても、オレはみちるさんのことを忘れない。
もしも忘れずにいたら、オレの【お願い事】を1つ叶えて。
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