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第15章 【薔薇色の日々】
『…あッ!いけない!私、引越しの途中だった!
マイコが部屋で留守番してくれてたんだった!』

「‥大変。早くお部屋を片付けなきゃ。
夜のお楽しみが減っちゃう!
コンバイン返してくる‥ちょっと待ってて!」

葵がコンバインに乗り込み、畦道を爆走した。
数分後、猛烈な全力疾走で帰ってきた。

「‥乗って!片付けなきゃ!片付けなきゃ!
みちるちゃんと愛し合えない!!」

おぶわれ、パニックになった葵が走り出す。
ぐらんぐらんと頭が揺れる。

『葵~目が回る~もっとゆっくり歩いて~』

「セックスの時間が減っちゃう!!」

『私、明日もお休みだよ?』

「えっ?!嘘ッ!やったぁ!!
せ~っくすざ~んま~い♪
み~ちるちゃ~んとせ~っくすざ~んまぁい♪」

声高らかに、妙なフシの歌を披露する葵。
少し落ち着いたのか、歩調を緩める。

『‥あのね、今度のボロアパートはね、花壇があるよ。ベランダも!』

「‥じゃあ、お野菜育てようかな?ズッキーニと…」

『豆は嫌だ!!』

「‥空豆にしよう。枝豆と、大豆と……」

『……………』

「オシオキはしない‥みちるちゃんは‥オレのお豆しか食べません…」

『葵!!』

「‥そんで、オレはみちるちゃんのお豆を食べまぁす…」

うふふと笑い声が聞こえる。
広い背中を叩いた。
葵はまだ笑っている。
つられて笑ってしまう。

『もう…お風呂も広いよ』

「‥お風呂が広いのか…いっしょに入ろうね?…トイレは広くないの?」

『う~ん。普通?』

「……………」

『ねぇ、今何考えたの?どうしてちょっとニヤッて笑ったの?
何か企んでる?』

「秘密~」

「‥あ、可愛いお花…」

野草のような白い野の花を手折り、葵が差し出す。

「‥花嫁さん、どうぞ…」

野の花を握り締め、葵の首筋に頬を埋めた。

「‥お花も育てよう。みちるちゃんが好きな、淡い色のお花」

『スケッチが出来るね!』

「‥そう。押し花を作って、植物図鑑を作ろう。お野菜も絵を描いたらいいよ。
1つ1つ葉っぱや茎の形が違うから…」

『楽しみ!!』

「‥お花をお部屋に飾って、お料理しようね‥写真も新しく撮ってもらおうね…」
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