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第6章 【妖怪パンツめくりの罠】
『ん‥。ねぇ、真央ちゃんは元気?』

「元気過ぎるくらい元気。アイツももう、二十歳になるんだもんなぁ~」

9歳下の三男・真央は小さな王様だった。
記憶の中の真央はおくるみの中ですやすやと眠っている。

『早いよねぇ。歳取るはずだよ。ついこの間まで赤ちゃんだった気がするのに』

「‥みーちゃんは真央もお気に入りだったよね。
今の真央を見たらみーちゃん驚くかも。
本当に、昔の爽ちゃんに生き写し。惚れちゃうかもよ?」

『もう‥』

孝介の言葉があながち出鱈目ではなくて言葉に詰まる。
爽介にそっくりな真央を“爽介のミニチュア”として私は可愛がっていたから―
惚れるという言葉には首を捻るにせよ。
葵と同じ歳の男の子。
恋愛対象になんてなるはずがない。

「そろそろお兄ちゃんと真央の話は止めにしてイイ?
‥いい加減、僕のことも知ろうとしてくれない?」

孝介が憮然とした表情で言い放つのでおかしくなった。
私は吹き出した。

『孝ちゃんのこと?
知ってるよ。幼なじみだもん』

「それは昔を、でしょ。今の僕のことなんて何も知らないじゃない」

『孝ちゃん、いくつになった?27歳?』

「そう。この前の10日にね。ちなみに、みーちゃんは1週間後が誕生日。
僕たち誕生月がいっしょなの忘れてたでしょ?」

『‥そうだった。毎年5月にクリームとチョコのケーキを並べてお祝いしてもらったっけね。
爽介は3月だからひな祭のケーキになったりして‥爽介、すごーく怒っちゃって!!
機嫌を取るのが大変だった』

「‥今、僕は実家を手伝ってる。営業だけどね。おいおいは跡を継ぐことになると思う。
身長は180cm。そこそこイケメン。おすすめだよ?」

『設計事務所の社長さんになるのかぁ。
‥孝ちゃんは昔から大きかったよね。今じゃ180cmもあるんだね。
そこそこって‥かなりイケメンだよ?
爽介も大きくなってた。私より背が高い爽介なんて、なんだか変。笑っちゃった』

アルコールが回ってきたこともあり、小さなことがいちいち面白いことのように感じる。
爽介と私の後ろを追いかけていた年下の背が高い男の子。
似ていないのに似ている、爽介の弟―
爽介が私を苛めれば、自分も同じように私を苛めた。
それでも私の名前を呼び捨てにすることは“お兄ちゃん”に許されなくて、ふてくされながら“みーちゃん”と呼んでいたあの子。
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