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第6章 【妖怪パンツめくりの罠】
私ひとりで笑い転げていたが、孝介は無表情だった。
その表情の中に爽介の面影を見つけて笑みが壊れた。

「―気づいてる?
さっきからみーちゃん、爽ちゃんのことばっか。
いったいいつになったら“僕自身”を見てくれるの?」

孝介の言葉に何も言えなくなる。

「お兄ちゃんの誕生日は覚えているのに僕の誕生日のことは覚えていない。同じ誕生月なのに、ね?
今だってここにいる僕よりも、ここにいないお兄ちゃんのことばかり考えてる。いつもそう。
“幼なじみ”なんて嘘だよ。“幼なじみの爽ちゃんの弟”それが僕。みーちゃんはいつもそう。爽ちゃんばっかり大好き!
次に好きなのは真央!
真央は爽ちゃんに似ているから。
僕はおまけ。僕はおみそ!」

激情に駆られる姿の孝介を見るのは初めてだった。

『爽介は‥同じ歳だったから‥真央ちゃんは赤ちゃんだったじゃない。皆、同じように好きだったよ』

同じように、は嘘だった。
私は物心ついた時から爽介に恋していた。
孝介と真央は“爽介の弟たち”だった。
“爽介の弟たち”を大切に想ってはいたが、そもそも感情の種類が違う。

「嘘つき!‥好きで遅く生まれたんじゃないよ。弟って損!
バレンタインだって時々僕の分、忘れてたよね。酷い‥」

背中を抱き締められていたのに、気が付けば孝介の顔がすぐそばにあった。
孝介は昔のことを引き合いに出して唇を尖らせている。
私は彼に謝らなくてはいけないのだけれど―
やっぱり妙におかしくなってしまった。
いい大人が、仮にも男女が抱き合っているのに誕生日だとかチョコレートなど些細なことで揉めていることが‥。
孝介をいじらしく感じた。

「何笑ってるわけ。
僕、真剣に怒ってるんだけど!馬鹿にしてる?」

『違うの‥ごめんね。ふふふッ。孝ちゃんって大人っぽいのにそういうとこあったなぁって。
普段はお利口さんなのに、たまに利かん坊になるの。
スカートめくりとかしてたじゃない。ついたあだ名が“妖怪スカートめくり”!!ははッ』
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