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Re:again
第1章 【夢をみること】
「仕事で遅くなったの?」

親しげな声に顔を上げるも、初対面の顔。
整った面立ちだった。
パーマの掛かった明るい髪色の男性。
紫色の眼鏡の奥の瞳は優しい。
声色もソフトだ。

『そう』

出来るだけ笑顔を浮かべようとしたが、怪しいところ。
合コンはもちろん、カラオケなんて久しぶりだから。

「俺、タカシ。宜しくねみちるちゃん」

タカシにデンモクを渡され、会話を探しているとタカシに女の子が話し掛けた。
至近距離なのに、会話の内容はわからない。
くすくすとふたりは微笑み合う。
デンモクを机の上に置いて再びメニュー表を手に取る。
マイコの姿を探したが
奥の席で盛り上がっているようだった。
よく観察すれば5対4。
私が来たことによって女の子が余ってしまうことになる。
とっさに目が泳いだ。頬が火照った。

「みちるちゃん、もうひとり騒々しいヤツが来るよ」

女の子の相手をしながらも、私を気遣ってくれるタカシ。
声に笑みが混ざっていた。
“空気読めよ”
という、女の子の鋭い眼差しはこの際見なかったことにする。
タカシがちらりとくれた視線が優しいので少しだけ心が落ち着いた。

*****

「てんめぇ~!貴史!! お前のせいで恥かいただろうが!!」

ドアがけたたましく開いた瞬間、罵声が轟いた。
少年が飛び込んでくる。
明るい茶髪のウルフカット。ところどころ金色のメッシュ。
トップに膨らみを持たせている。
おびただしいピアスと首回りにもシルバー。
ここいらの田舎では珍しいギャル男そのもの‥。
黒いポロシャツとジーンズが目に入り、先ほど私を“ブサイク”呼ばわりした人物だと気付く。
なるほど、少年の顔は女の子のように愛らしかった。

「なんで俺のせいよ。
あらかた、部屋でも間違えたんだろ?
部屋番号確認しなかったお前が悪い」

タカシはくつくつと楽しそうに笑った。

「部屋入った途端、ヤッてたんだよ!!」

「得したじゃん。目の保養になっただろ?
今夜は白飯だけで事足りるな。
何をそんなに怒ってるわけ?
もしかして、ご無沙汰だから反応しちゃった?」

「‥てめぇは本当に性格悪いわ!!!」

タカシに少年が掴みかかる。

「何を今さら。ずっとこうだったでしょーが」

タカシは少年の攻撃をヒラリとかわすと
自分の長い手足の中に閉じ込めてしまった。
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