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Re:again
第8章 【紫陽花色の雨】
葵とは結局、一線を越えなかった。
在り方を変えるのは容易いことだったけれども‥。
唇を奪い合う最中で葵が発した
「‥みちるちゃん、オレを抱くの?…」
という言葉に私は怯んだ。
葵は“綺麗な身体でいたい”と言った。
冗談めかして口にしたが、おそらくあれは本音だ。
葵は静かに私へ追い討ちをかけた。
「‥オレはね、“特別なひと”しか抱けない。
だから、みちるちゃんがオレを抱きたいなら好きにしていいけど、オレがみちるちゃんを抱くことは出来ないよ」
柔らかな声だったが、拒絶だった。
それ以上、葵に触れることは叶わなかった。
*****
最近、葵は研究所に泊まり込むことが多い。
“あおいのおかしばこ”は底が見えそうになる度、私が補充した。
葵の差し入れがなくとも生活は出来た。
何故か生活用品は有り余るほどストックされていたし、慎ましく生活していればどうにでもなるものだ。
このまま葵とは疎遠になるのかも知れないな‥そんなことを考え始めると、ふらりと葵は現れた。
入り浸っていた頃と何ら変わりなく甲斐甲斐しく私の世話をし、寝転がっている。
そしてこれまでとは違い、来訪した際には必ず泊まっていった。
今まで泊まることはあってもこの部屋で葵が入浴することはなかった。
ユニットバスは葵には小さ過ぎる。
そうなってからはじめてお風呂上がりの牛乳の習慣を知ったし、葵の愛用するシャンプーの銘柄を知った。
《これまで》と今と葵の中でどう違うというのだろう。
何が変化してきているのだろう。
時々、私はたまらなくその変化が恐ろしい。
風呂上がりに濡れ髪のまま、私をじっと見つめる葵の瞳に胸が騒ぐ。
夜はいっしょの布団で眠る。
私はまた、葵に拒絶されることが怖くてなるべく離れて眠った。
それでも目覚めた時には葵の腕の中にいる。
離れようとすると寝起きの悪い葵に羽交い締めにされる。
この部屋に葵がいることが再び当然のように感じ始める頃、葵は消えてしまう。
以前より私たちの関係は奇妙で、より不可解なものとなった。
*****
布団の中で密かに葵の来訪を待ちわびたが、その日結局葵は訪れなかった。
******
在り方を変えるのは容易いことだったけれども‥。
唇を奪い合う最中で葵が発した
「‥みちるちゃん、オレを抱くの?…」
という言葉に私は怯んだ。
葵は“綺麗な身体でいたい”と言った。
冗談めかして口にしたが、おそらくあれは本音だ。
葵は静かに私へ追い討ちをかけた。
「‥オレはね、“特別なひと”しか抱けない。
だから、みちるちゃんがオレを抱きたいなら好きにしていいけど、オレがみちるちゃんを抱くことは出来ないよ」
柔らかな声だったが、拒絶だった。
それ以上、葵に触れることは叶わなかった。
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最近、葵は研究所に泊まり込むことが多い。
“あおいのおかしばこ”は底が見えそうになる度、私が補充した。
葵の差し入れがなくとも生活は出来た。
何故か生活用品は有り余るほどストックされていたし、慎ましく生活していればどうにでもなるものだ。
このまま葵とは疎遠になるのかも知れないな‥そんなことを考え始めると、ふらりと葵は現れた。
入り浸っていた頃と何ら変わりなく甲斐甲斐しく私の世話をし、寝転がっている。
そしてこれまでとは違い、来訪した際には必ず泊まっていった。
今まで泊まることはあってもこの部屋で葵が入浴することはなかった。
ユニットバスは葵には小さ過ぎる。
そうなってからはじめてお風呂上がりの牛乳の習慣を知ったし、葵の愛用するシャンプーの銘柄を知った。
《これまで》と今と葵の中でどう違うというのだろう。
何が変化してきているのだろう。
時々、私はたまらなくその変化が恐ろしい。
風呂上がりに濡れ髪のまま、私をじっと見つめる葵の瞳に胸が騒ぐ。
夜はいっしょの布団で眠る。
私はまた、葵に拒絶されることが怖くてなるべく離れて眠った。
それでも目覚めた時には葵の腕の中にいる。
離れようとすると寝起きの悪い葵に羽交い締めにされる。
この部屋に葵がいることが再び当然のように感じ始める頃、葵は消えてしまう。
以前より私たちの関係は奇妙で、より不可解なものとなった。
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布団の中で密かに葵の来訪を待ちわびたが、その日結局葵は訪れなかった。
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