この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Re:again
第8章 【紫陽花色の雨】
*****
夢をみた―
枕元に、葵が胡座をかいて座っていた。
私の頬をゆるゆると撫で、
「‥痩せた?‥ごはん食べなきゃ、ダメでしょ…」
と言う。
―食べたくない。
やっと言葉を紡ぐ。
あぁ、これは。
過去の出来事かも知れないな。
帰郷した頃、葵はいつもこうやって私の枕元に座っていた。
中学生の葵の姿をもう一度目にしたいのに、目蓋が重い。
葵の手の感触が心地よい‥。
葵がそばにいることが嬉しくて笑う。
「‥みちるちゃん、寂しかった?…」
その口振りに、あれ?と違和感を感じる。
あの頃葵は私のことを“みちるさん”と呼んでいた。
この葵はいつの頃の葵なんだろう?
顔をちゃんと見たいのに、どうしても焦点がうまく結べない。
「‥寂しかった?…」
―うん。
「‥ひとりでいるのが、寂しかった?
それともオレがいなくて、寂しかった?…どっち?……」
葵がいなくて寂しかった。
そう言いたいのに、うまく口にすることが出来ない。
舌がひきつれ、唇の奥で言葉がもつれる。
「‥助けてって言ってよ。オレに助けて欲しいって言って。
そうしたら、助けてあげられるから。
オレがいなくて寂しかったって。
オレの存在が必要だって言って」
何を助けてくれるの?
どうして助けてくれるの?
葵が何を言っているのかがわからなくて、余計に言葉がもつれる。
長い静寂の後、私は吐息のような声を洩らした。
『‥‥この世に、寂しくないひとなんているの?
皆ひとりぼっちでしょう?』
心地良い手が離れ、ゆっくりと葵が立ち上がる気配がした。
引き留めたかったけど、これは夢だから仕方がないなとも思った。
私の意識は奈落に吸い込まれてゆく―
*****
夢をみた―
枕元に、葵が胡座をかいて座っていた。
私の頬をゆるゆると撫で、
「‥痩せた?‥ごはん食べなきゃ、ダメでしょ…」
と言う。
―食べたくない。
やっと言葉を紡ぐ。
あぁ、これは。
過去の出来事かも知れないな。
帰郷した頃、葵はいつもこうやって私の枕元に座っていた。
中学生の葵の姿をもう一度目にしたいのに、目蓋が重い。
葵の手の感触が心地よい‥。
葵がそばにいることが嬉しくて笑う。
「‥みちるちゃん、寂しかった?…」
その口振りに、あれ?と違和感を感じる。
あの頃葵は私のことを“みちるさん”と呼んでいた。
この葵はいつの頃の葵なんだろう?
顔をちゃんと見たいのに、どうしても焦点がうまく結べない。
「‥寂しかった?…」
―うん。
「‥ひとりでいるのが、寂しかった?
それともオレがいなくて、寂しかった?…どっち?……」
葵がいなくて寂しかった。
そう言いたいのに、うまく口にすることが出来ない。
舌がひきつれ、唇の奥で言葉がもつれる。
「‥助けてって言ってよ。オレに助けて欲しいって言って。
そうしたら、助けてあげられるから。
オレがいなくて寂しかったって。
オレの存在が必要だって言って」
何を助けてくれるの?
どうして助けてくれるの?
葵が何を言っているのかがわからなくて、余計に言葉がもつれる。
長い静寂の後、私は吐息のような声を洩らした。
『‥‥この世に、寂しくないひとなんているの?
皆ひとりぼっちでしょう?』
心地良い手が離れ、ゆっくりと葵が立ち上がる気配がした。
引き留めたかったけど、これは夢だから仕方がないなとも思った。
私の意識は奈落に吸い込まれてゆく―
*****