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Re:again
第8章 【紫陽花色の雨】
『大丈夫!
葵は、綺麗な身体のままでお婿さんに行くんでしょ!』

引き剥がされまいとますます腕の力を強くする私。
私の声が尖っているからか、葵が薄く微笑んだ。

「‥それとこれとは別…」

引き剥がすことは諦めたのか、背中を擦ってくれる。
葵の腕の中はいつだって心地が良い。

『別じゃない!』

「‥意思では‥どうにもならないものなの…」

葵のぽやぽやした声。
頭を胸に擦りつける。痛くしようとしているのに葵の身体はびくともしない。
頭を撫でられ眠くなってくる。

『葵はどうしてセックスしないの?』

んー?
頭の上から声が降ってくる。
葵も眠たいのだろうか。
くっついた身体が熱い。

「その気になれば誰でも抱けるから」

葵の声は優しいのに、言葉の意味を考えると怖くなる。
膝から降りようとすると、葵の腕の力が強くなった。
再び身体が密着した。

「‥その気になれば相手がどこの誰であっても、そのひとのことを知ろうが知るまいが関係なくたぶんオレは抱ける。
相手のことなんて少しも思いやらずに、自分の欲望だけを優先して。そのひとのことが微塵も好きじゃなくても」

葵の眼差し、声は変わらず優しい。
仕草と言葉の落差に混乱する。

「‥でもそれって―
ある意味、暴力みたいなものだと思うから…だから‥“特別なひと”じゃないとオレは抱かないよ…」

葵の体温。背中を擦る手の大きさ。ふわふわした声。眼差し。
私を安心させる葵のすべて。
私が知っている葵のすべて。
だけど‥今の葵は知らないひとのように遠い。
膝の上に抱かれながら、私は葵のことを何一つ知らないのではないかと焦燥に駆られる。

「‥みちるちゃんは‥オレに暴力を振るわせたい?…」

首を横に振る。
優しい葵にそんなことはさせたくない。

「‥良かった。オレも、みちるちゃんには優しくしたい…」
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