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絹倉家の隷嬢
第2章 接触
「落ち着いて話ができないでしょう? その窓の留め金は外してあるから、中にお入りなさい」
修一は桜子に言われるまま、紅い部屋の窓の下に片手を掛けた。
ガラス戸の下半分が上に滑るように開いた。
修一は上半身を部屋の中に入れ、カアテンを抜けて転がるように床の上に降りた。
床には深紅の毛並み豊かなびろうどの絨毯が敷かれている。絨毯の部屋など初めてだ。
修一は上半身を起こし、座ったまま周りを見渡した。
今までおぼろげにしか見ることのできなかった部屋の中を初めてはっきり見た。
が――。
その奇妙な光景に、修一は呆然とした。
深紅なのは絨毯だけではない。壁も天井も絨毯のようなものが隙間なく貼られていて、この六畳ほどの空間は全て深紅に埋めつくされていた。
平面的に描いた椿の花と葉が、規則正しく並べられた意匠の大きなソファがひとつ置いてある。その他に、背もたれのない低い小さな椅子のようなものがひとつ。これもクッションはソファと同じ意匠だ。
修一の背よりもっと低い洋式箪笥が、窓から一番遠い隅にあり、その上には置き時計と、ゆらゆらと炎をくゆらす蝋燭、それを乗せた燭台がある。
そして――
何よりも奇妙なことに――
窓のある壁以外の全ての壁から、裸の桜子がヌッと胸から上と両腕を出していた。
まるでつい今しがた幽霊が壁を突き抜けてきたかのように――。
窓側すなわち修一の座っている位置から見て縦長のこの部屋の、左の壁に三人、奥の壁に二人、右の出入口扉のある壁に二人、都合七人の、寸分違わず同じ桜子がいる。修一の背の高さからやや上くらいだろうか、皆同じ高さから身体を突き出している。
服は着ていない。丸い乳房もその先の乳首もあらわで、髪飾りも何も付けていない。
修一は思わず後ずさりした。気でも触れたのかと思った。
が、よく見ると――それらは『生き人形』だった。
鹿の首のはく製を飾るかのごとく、壁にすえ付けられているのだ。
修一は桜子に言われるまま、紅い部屋の窓の下に片手を掛けた。
ガラス戸の下半分が上に滑るように開いた。
修一は上半身を部屋の中に入れ、カアテンを抜けて転がるように床の上に降りた。
床には深紅の毛並み豊かなびろうどの絨毯が敷かれている。絨毯の部屋など初めてだ。
修一は上半身を起こし、座ったまま周りを見渡した。
今までおぼろげにしか見ることのできなかった部屋の中を初めてはっきり見た。
が――。
その奇妙な光景に、修一は呆然とした。
深紅なのは絨毯だけではない。壁も天井も絨毯のようなものが隙間なく貼られていて、この六畳ほどの空間は全て深紅に埋めつくされていた。
平面的に描いた椿の花と葉が、規則正しく並べられた意匠の大きなソファがひとつ置いてある。その他に、背もたれのない低い小さな椅子のようなものがひとつ。これもクッションはソファと同じ意匠だ。
修一の背よりもっと低い洋式箪笥が、窓から一番遠い隅にあり、その上には置き時計と、ゆらゆらと炎をくゆらす蝋燭、それを乗せた燭台がある。
そして――
何よりも奇妙なことに――
窓のある壁以外の全ての壁から、裸の桜子がヌッと胸から上と両腕を出していた。
まるでつい今しがた幽霊が壁を突き抜けてきたかのように――。
窓側すなわち修一の座っている位置から見て縦長のこの部屋の、左の壁に三人、奥の壁に二人、右の出入口扉のある壁に二人、都合七人の、寸分違わず同じ桜子がいる。修一の背の高さからやや上くらいだろうか、皆同じ高さから身体を突き出している。
服は着ていない。丸い乳房もその先の乳首もあらわで、髪飾りも何も付けていない。
修一は思わず後ずさりした。気でも触れたのかと思った。
が、よく見ると――それらは『生き人形』だった。
鹿の首のはく製を飾るかのごとく、壁にすえ付けられているのだ。