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絹倉家の隷嬢
第2章 接触
(2)
桜子は片手で修一にピストルを向けたまま、もう一方の手で扉を閉め、カチャリ、と錠を掛けた。
修一は靴を履いたままであることに気づき、あわてて脱ごうと足先に手をかけた時、桜子が言った。
「履き物はそのままで良くてよ」
桜子は真っ赤なガウンに身を包み、毛並み豊かなスリッパを履いている。修一はガウンも、毛皮で作ったようなスリッパも、見るのは初めてだった。
修一は、恐る恐る桜子の顔を見た。
桜子は――
ほほ笑んでいた。
どうしてこの人は笑ってるのだろうか?
犯人を見つけることができて嬉しいからだろうか?
桜子は座ったままの修一の前にしゃがんで、ピストルの銃口を修一のあごの下に付け、クイッと上に押した。修一の顔がやや上を向く。
「私の裸と彼の裸、どちらが綺麗だったかしら?」
「え……?」
「もう一度しっかり聞きなさい。三度目はないわよ? 私と彼、裸が綺麗だったのは?」
「そ、その……おぼろげにしか見えなくて……」
「それでも覗いていたかったの?」
桜子は修一の心をもてあそぶような笑みで問いかける。
「イヤ……あの……その……」
「こんな真面目そうでおとなしそうな顔なのに、中身は大胆なのね」
年齢が年齢なので幼さがあるのは当然だが、修一は顔つき自体が童顔で劣等感を抱いていた。それゆえ今まさに桜子が言った『真面目でおとなしそう』と形容されることが多かった。修一はそれが嫌だった。
が、この状況でそれを不快に感じる余裕などはない。
桜子はピストルの引き金に指をかける。
修一はかすかに体をびくつかせ、呼吸を荒くし目をつむる。
桜子が引き金を引いた。
カチャリ……と無機質な金属音だけが響く。
修一は大きく息を吐き、ゆっくり目を開ける。体中に汗が噴き出ている。
「フフフ、可愛い……あなたって本当に可愛いコ」
桜子はそう言うと、ピストルを絨毯の上に置き、立ち上がって腰紐をほどいた。