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絹倉家の隷嬢
第2章 接触

(3)

 修一は桜子の言葉の意味が分からなかった。
 聞き間違いかとも思った。
 覗き見していた自分が鞭打たれるのなら分かるが、逆に桜子を鞭打つよう言っているのだ。

 桜子は顔を少し修一の方に向け、じれったそうに言った。
 「あなたは何度も同じことを言わせるのがお好きね……早く私のお尻をぶって」
 修一は握らされた鞭を手に、おそるおそる立った。

 自分のような庶民に、華族の令嬢が裸体をさらすだけでもただごとではないのに、卑猥な体勢をとり、あろうことか女性の全てを見せつけながら鞭で打てと言うのである。
 深紅の床と壁と天井、蝋燭だけの薄い灯り、そして七体の桜子というこの異空間が、修一に悪い夢か幻覚でも見せているのではないだろうか。

 「早く」
 桜子がうながす。
 しばしの間ためらった後、やがて修一は、桜子の丸い尻肉に鞭を振り下ろした。
 ペシ……。
 軽く抜けたような音がした。
 桜子が挑発的な顔で修一を見る。
 「……それでも男子なの?」
 その言葉に、修一の心に何かの火種がくすぶり始めた。

 修一は力を入れてもう一度鞭を振り下ろした。
 ベシッ……!
 皮膚を鋭く弾く音がした。
 「違うの! もっと! もっとよ!」
 修一は目をつむり、半ばやけになって思い切り鞭を振り下ろす。
 バシイィィッ!!
 強烈な音がした。
 「アアアッッッ……!!」
 桜子が叫ぶ。

 修一は目を開け、あわてて問いかける。
 「い、痛かったですか……?」
 鞭打たれて痛くないわけがない。修一は自分で何を言ってるんだろうと思いながらも、そう言わずにいられなかった。
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