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絹倉家の隷嬢
第3章 耽溺

3.耽溺


(1)

 修一は、桜子の素手で精液をしぼり出された直後はとてつもない罪悪感と不安感に襲われたのに、女体の責め絵を見せられているころには早くも情欲が頭をもたげ、絹倉邸を抜け出し森に入った時にはもう桜子の身体が欲しくて辛抱ができず、その場で自らの手で『ピナス』をしごいて地面に体液をまき散らした。

 一週間は修一にとって長かった。日がな一日桜子の裸体を想わない日はなかった。そして毎日のように厠で手淫した。

 桜子の貸してくれた責め絵の本も修一にとって極めて刺激的だった。
 桜子は『縛り方を覚えろ』と言った。
 桜子は、修一に桜子を縛れと言っているのだ。
 あの、美しい桜子を、修一が自らの手で縛るのだ。

 修一は、本の中で緊縛され、責めを受けている女たちに桜子の姿を重ねた。
 あられもない姿で、身体の自由を奪い、辱めや苦痛を受けさせる――
 それだけでも、胸の中に情欲がわき起こり、下腹部へと集まる。

 もしこの本を、桜子との出逢いなしに見ていたとしたら、どうであったろう?
 女体の裸が描かれているがために単純な興奮を覚えることはあったかも知れない。
 が、ただそれだけだろう。

 しかし『責める悦び』をじかに体感した今の修一には、その女体はただの女体以上の意味を持っていた。
 これが桜子の言う『美しさ』であるならば、修一はもっと桜子の『美しさ』を引きずり出して目の当たりにしたい――そう思った。
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