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絹倉家の隷嬢
第3章 耽溺

(4)
修一は、いつものように窓から部屋を出て、縄を伝って絹倉邸の裏側に降りた。そして屋根に引っ掛けていた縄を回収して垣根の方へ向かおうとした。
が――。
突然背後から首を締め付けられたかと思うと、後ろ向きに倒された。
修一は必死にもがくが、首に掛けられた腕は離れない。
首が絞まり気管が圧迫される。
苦しい。
「貴様か……! 貴様みたいな子供だったのかッ……!!」
締め付けてくる腕の主が声を抑えつつ強い口調で言った。男の声だ。
修一は抵抗を試みるが、相手は大人の体格だった。しかもたくましい。
勝ち目は全くなさそうだ。
「お前を警察に突き出す! お嬢様が何と言おうと!」
その時、修一の目にまぶしい光が突き刺さった。
「そんなに私の身体が欲しいの、三河?」
桜子の声だ。
男は修一を投げ飛ばした。
修一は壁に背中をぶつけた。かなり痛い。
「おやめなさい!」
桜子はガウン姿で手持ちランプを片手に立っていた。
さっきまでの――悦楽に溺れていた牝の顔ではなく、凛とした子爵家令嬢の顔だった。
三河と呼ばれた男は立ち上がって服を軽くはたいた。
修一が目にした三河は、学生服姿で思った通り体格もよく、顔つきは精悍だった。
「お言葉ですが、お嬢様……」「三河!」
桜子は言葉をさえぎって、三河に詰め寄った。
「私をぶつことは出来ないくせに、弱い相手は腕力でねじ伏せるのね」
三河が桜子から顔をそらす。

