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第9章 依頼人　瑠璃

麗子は瑠璃を食堂に案内した。

「女将さん
　今日からはいる瑠璃ちゃん。
　よろしくお願いします」

女将と呼ばれた女性が厨房から出てきた。

「女将さんはね
　昔、赤坂の割烹料理屋を営んでいたの。
　事情があってここに来たんだけど
　さすがに女将の割烹料理は美味しくてね。
　もう出ても構わないんだけど
　みんなで引き留めちゃったのよ。

　瑠璃ちゃんも教わるといいわよ」

上品に笑う着物姿の女性

「瑠璃ちゃん、宜しくね。
　みんな女将さんって呼んでくれているから
　瑠璃ちゃんもそう呼んで。

　引き留められたっていうより
　行くあてもないから甘えてるだけ」

女将はにっこり笑った。

「宜しくお願いします」

瑠璃は女将に向かって頭を下げた。

建物を案内してもらい
麗子はひとつの部屋の扉を開けた。

「ここが瑠璃ちゃんの部屋」

そこは６畳ほどのワンルームだった。

広くはないが個室を貰えるだけで充分だ。

「不便があったら言って。
　なかにはこの建物のなかでさえ
　恐くて一歩も出られない人もいるの。
　そういう人の部屋はキッチンもお風呂も付いているわ

　もし見かけて挨拶が返ってこなくても気にしないで」

「はい」

瑠璃は頷いた。