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第9章 依頼人　瑠璃

「気を悪くしたらごめんなさいね。
　あなたの名前を聞いたときから気になってたの」

瑠璃はスカートを掴んだ。

「実はねあなた結構有名なのよ。業界で。
　良くも悪くもね。
　オフィス綾は数年前から急にいい仕事が入るようになったって話題になって

　...あなたの存在が知られるようになった。
　もちろん、ある一部の人しか知らないわよ。

　この世界じゃ枕営業なんて当たり前だけど
　タレントでもないあなたがしかも社長の娘が
　そんなことやらされてるなんてみんな耳を疑ったわ

　特にね、事情を知った綾に所属するタレントさんたちはあなたに本当に申し訳ないって思ってるの」
　
「え?!」

瑠璃は顔をあげてベティを見つめた。

ベティは瑠璃を見て頷いた。

「社長に直談判した女優もいるらしいの。
　もう瑠璃ちゃんにそんな酷いことさせないでくれって
　自分がやるからタレントでもない瑠璃ちゃんに
　そんなことさせないでくれって。

　みんなあなたに感謝してるわ。
　新人でもかなりいい仕事が貰えるから。
　でもみんな苦しんでるの。
　瑠璃ちゃんに辛い思いをさせて自分が有名になっていくことに。

　だからね、もうやめていいのよ。
　嫌なら断っていいの。
　もし生活のことで悩んでいるなら
　綾のタレントさんが助けてくれるわ。

　もしあなたに会う機会があれば
　それを伝えたいって
　みんな言っていたわよ。
　辛い思いをさせてごめんねって」

瑠璃の瞳から涙がこぼれた。