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第9章 依頼人　瑠璃

「母親は？」

麗子が尋ねる。

「それが不思議なんだよ。
　あれほど瑠璃を疎ましく思っているはずの母親が
　瑠璃の親権を手放そうとはしない」

「日野佳子が？」

「そうなんだよ。
　父親が瑠璃をオモチャにしはじめたころ
　母親に瑠璃の親権を渡せと迫ったらしいが
　母親はまったく応じなかったらしい。
　腑に落ちないんだよ。

　もうちょっと探ってみるよ」

「そうね。お願い」

洋ちゃんはタバコに火をつけた。

「で、瑠璃はどう持っていくんだ？」

「そうね...
　まずは父親に慰謝料請求をするわ。
　そして今後瑠璃に近づかないように命令を出してもらう」

「そんなに簡単にいくか？」

洋ちゃんはタバコの煙を吐きながら麗子を見つめた。

「両親から親権を取り上げたいところなんだけど
　日野佳子が応じないとなると時間かかるかもね」

「麗子が成年後見人か？」

「そのつもりよ」

「なんか...父親をギャフンと言わせる方法ねぇかな」

洋ちゃんは天井を見つめて考える顔をした。

「いくつか策はあるんだけどね」

「なんだよ」

麗子が洋ちゃんに顔を近づける。

「キスしてほしいのか？」

洋輔がふざけた。

「バカ、密談よ」

麗子が呆れた顔をした。